2011年03月17日

デマとノイズの津波は被災者を苦しめる 〜緊急時情報発信の大原則〜

3月11日に発生した東日本大震災、史上最大の規模の揺れ、津波、そしてその後に続く原発事故など、正に未曾有の激甚災害です。

情報収集を行えば行うほど、現状のレベルで被害がとどまっている事が奇跡に近いと感じます。

世界が賞賛する様な「災害発生時としては考えられない様な冷静で忍耐強い対応」も特徴です。
もちろん、窃盗といったトラブルがないわけではありませんが、「暴動」は発生していません。
この点については日本の文化的成熟度と国民のモラルの高さが大きな要因ですが、同時にインターネットなど「情報伝達手段の多様化」もこれに一役買っていると思います。

非常時、人は「なにが起こっているのか」「どうすればいいのか」といった生存に必要な情報を欲します。
こういった情報がないと、わずかな伝聞情報や流言飛語にすがって過った対応を起こす事もあります。
また、大きな精神的ダメージを受けている状態では、現状を堪え忍んで生き抜く為の支えとして「孤独からの救済」のための情報、励まし、共感、支援のメッセージも非常に重要になります。

そして、これら必要な情報を被災者に届けようとした時、最大の障害は「デマ」や「ノイズ情報」なのです。
デマは疑心暗鬼や誤った対応の温床となり、ノイズ情報は正しい情報を埋もれさせて情報伝達の大きな障害となります。
情報による2次被害を少しでも減らせればと思い『緊急時情報発信の大原則』をまとめました。
良かれと思って行った事が、逆に被災者を苦しめる・・・これほど悲しい事はありません。
そんな悲劇を防ぐ為にも、是非ご一読頂ければ幸いです。



【被災地以外の人の大原則】

(1)電話、携帯メールは被災地の人の為に使用を控え、ネットを活用する

インターネットは最初通信が分断されても情報共有が可能であるようにとの軍事目的で開発されました。
ですので、原理的に災害状態に強い通信手段です。
データ通信は通信量に比べて多くの情報を伝達できるのも特徴です。
携帯メールはインターネットを経由しますが、その前段階で携帯電話各社のサーバで処理される為、携帯メールを大量に使うと送信不能や配達遅延が起こります(正月の年賀メールと同じです)。
また被災地では携帯の電池は貴重で、被災者に携帯メールが大量に殺到すると「携帯メール受信で貴重な電池を消耗」してしまいます。
携帯メールでの安否確認電話も現時点では『ノイズ情報』になってしまいます。
携帯電話だけでなく携帯メールも使用を控え、G-mailやSNSのメッセージといった別の手段を被災地との通信手段として下さい。


(2)Twitter、SNSの日記、Blogは『メディアと同じ情報発信である』事を自覚する

Twitterでの、SNSの日記、Blogなどは非常に個人的な発言の様に感じてしまいがちですが、クローズドでの発信以外は全て「メディアと同じ情報発信」です。
そして手書き文字でなく活字(というかフォントですが)になっていると、受け手はマスメディア情報と似た様な感覚で受け取ります。
特にTwitterでのRT(リツイート)は非常に簡単で拡散力が強いのですが、これも「メディアと同じ情報発信」なのです。
「自分の私的な発言なんだから」という感覚でリツイートしたことが、多くの人の目に止まる事など日常茶飯事です。
またTwitterはSNSの日記やBlogなどの「プルメディア」と違い、TVやラジオに近い「擬似的なプッシュメディア」といえます。これは「その情報を見たくない人のタイムラインにも自分の発言が表示される」可能性がある事を意味します。
公開発言は全てメディアと同じ「情報発信である」との自覚をお願いします。


(3)伝聞情報、ニュースは『極力一次ソースに当たって確認してから拡散する』

先日、「“確認してから言え”とかいうバカが多いが、読みたくなければ読むな。」「災害のときは、不確かな速報も必要なんだよ。」と仰った著名人の方(*1)がおられましたが、これはあまりにも無知な話ですし、状況を把握していません。

たしかに「被災地にとっては」不確かな情報が必要な場合があるでしょう。
けれども「被災地以外の人」は一呼吸置ける環境があります。
そして「情報の確認を取る事は “被災地以外の人” にしかできない」のです。
被災地の人に確認を取れなんて無茶もいいところ、こういう作業は通信環境が整い生存の危機にさらされていない状況の人にしかできない事なのです。
ボランティアというなら、「被災地に正確な情報を届ける為の確認作業」こそが今すぐに可能なボランティアです。
ちょっとググる、すこし確認をするだけでデマやノイズ情報の拡散を大きく減らす事が可能です。
もちろん「チェーンメール」も同様で、伝聞情報は必ず一次ソースで確認を取るべきです。
チェーンメールはデマの拡散だけでなく、被災者の貴重な携帯電話の電池を消耗するのでさらに悪質です。
これらの行為は善意から行われている事が多いでしょうが、大災害後の緊急時である今は善意だからと言って許容出来る状況にありません。
確認作業が出来る環境の人が確認努力を放棄し、ただ速報性だけを求めて不確かな情報を拡散する行為は“被災者へさらなる苦痛を強いる行為”であると言えます。


(4)情報は「修正、削除可能な方法で」発信する

確認をとった時点では正しいと思った情報も、その後の状況によって間違った情報になってしまう事があります。
ですので、極力修正や削除できる方法での情報発信が重要です。
SNSの日記やBlogは修正や追記で対応できると思います。
Twitterでリツイートする場合は、出来る限り「公式RT」を利用して下さい。
発信元が発言を削除すれば関連の公式RTも同時に削除されるので、ノイズ情報の蔓延をかなり防げます。


(5)情報を集積するようにつとめる

情報の拡散は重要ですが、同時に集積しなければ被災者が情報収集するのに非常に困ります。
現在、安否情報やインフラ状況などを集積したサイト(*2)(*3)が複数立ち上がっています。
自前での情報発信だけでなく、Twitterなどで発信された安否確認依頼や避難所情報などはこういったサイトに集積して被災者の利便性を向上させる事も必要です。



【被災地の人の大原則】

(1)被災地内同士の連絡にも災害ダイヤル等を活用する

電話が繋がらない状況でたびたび電話発信すると電池を大きく消耗します。
また、圏外表示の場合は電源を切っておかないと携帯が自動的に電波を探しに行ってしまう為、待ち受け時間が短くなってしまいます。
特に被災地内同士の通話はインフラの復旧が前提になりますので、無理に通話しようとせず、極力災害ダイヤル等を利用する事が効果的です。


(2)安否情報は情報の集積サイトで確認を

既に安否情報の確認サイトには大量の情報が集まっています。(*3)
Twitterで「安否情報を下さい」とツイートするより、PCが使える地域へ「○○さんの安否情報を情報サイトで調べて下さい」と検索を依頼するのが最も早く安否確認出来ます。
それで見つけられなかったら、改めて安否情報を求めると良いでしょう。


(3)救援物資等の状況には県名、地名を出来るだけ詳しく入れる

類似地名等もあり、また被災地以外の人は土地勘がない為、ある程度場所を詳しく書いて頂く事が情報の有効活用につながります。


(4)どんな情報でもいい、発信できる人は現地の情報を発信して下さい

TV等のマスメディア情報は最も困難に直面している被災地には入り込めません。
ツイートでもBlogでも写メでもいい、それこそ不確かな情報でも構いません。
出来るだけ多くの情報を発信して頂ければと思います。



最後に。
この度の災害でお亡くなりにたった方のご冥福をお祈りすると共に、行方不明の方の無事を祈っております。

そして・・・この災害で生き残って下さった方々、本当にありがとうございます。
あなた方がが生きていてくれる事、そのこと自体が何事にも変えがたいほど嬉しく思います。
生き残ってくれて、生きていてくれて本当にありがとう。




(*1)『池田信夫氏の原発関連ツイートへの批判/擁護に見る「情報の速報性と正確性」について』
   http://togetter.com/li/110792

(*2)【災害関連リンク集】政府、地方自治体関連(CNET Japan)
   http://japan.cnet.com/sp/eq2011/35000482/

   【災害関連リンク集】インフラ、ライフライン関連(CNET Japan)
   http://japan.cnet.com/sp/eq2011/35000481/

   【災害関連リンク集】義援金、支援(CNET Japan)
   http://japan.cnet.com/sp/eq2011/35000487/

(*3)【災害関連リンク集】安否確認(CNET Japan)
   http://japan.cnet.com/sp/eq2011/35000489/
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2011年03月10日

反対派がTPPと米国の思惑を切り分けて考えなければならない「たった一つの絶対的な理由」

えらく刺激的なタイトルで、賛否両論の集中砲火を浴びそうですが・・・
このエントリーのカテゴリを「情報戦略・戦術」に分けてあるのをご覧頂ければお判りいただけるかと思いますが、いつもの視点と違い今回のエントリーはTPPの経済的側面等ではなく「如何にTPP反対の世論を動かすか」という視点から書いています。
言い替えれば「TPP賛否という喧嘩の仕方」と言ってもいいでしょう。
なにせ内閣肝いりで総理が世界に向けて「やる」と言ってしまっているので、国民の大多数が反対しなければこの状況は覆せない可能性があります。
このブログをご覧になる方々は、問題意識も高く「自分で情報を収集し、その上で賛否を判断しようとする人達」でしょう。
ですが、大半の人は「TPPの中身ではなく議論している人達の言動だけを見て判断する人達」です。
それが悪いとは言いません、というかそれが普通だとおもいます。
ということは、反対派の論陣の張り方次第で上記の一般層を取り込めるかどうかが変わってきます。
この点に関しては、議論自体は正しくても、ほんの些細な事でひっくり返されてしまう事もあります。


◆本題に入る前提条件

既にご存じかとは思いますが、まず最初にTPPに関してこのブログの立ち位置を。
  1. TPP加盟に関しては米国の思惑や動向に関係なく反対です
  2. 農業の合理化、大規模化に関する論議は否定しませんが、それはTPP加盟による農業壊滅を回避してからの問題でしょう
  3. 地方公共事業依存改善に関する是非以前に、TPP加盟により公共事業による地方景気対策の効果がなくなる点は看過できません
  4. 是非の判断基準は「国益」=「日本国民の利益」で、日本企業の利益ではありません
  5. 「米国の思惑」が有る事は事実で、国益にとってその事は脅威と考えています<ココ重要

◆米国の思惑を是非の根幹理由にしてはいけない「たった一つの絶対的な理由」

それは次の一文に尽きます。

『米国の思惑を理由にしたTPP反対は推進派に逆利用される危険がある』

言い替えれば、米国脅威論によるTPP加盟反対論は賛成派にとっても「米国にとっても」非常に与しやすいのです。

例えば、反対派がTPP加盟すると米国の食い物にされるという理由で一致団結し、世論にTPP=米国の構図を浸透させて反対派を増やしていった場合、米国としては自分たちが加盟しなければ日本はTPPに加盟するだろうと考えるでしょう。
日本の入らないTPPに米国が加盟しても得るものはあまり無く、失うものが大きいので、日本が加盟しなければ意味がありません。
その日本が「米国の食い物に・・・」という論調で反対に傾いたのであれば、自分たちが一旦加盟交渉から撤退し、米国抜きのTPPに日本を加盟させた上、後から米国が加盟するだけで自分たちの目的は達成されます。
当然、米国には後から入っても内部で主導権を握れる力がありますし、その段になって日本が脱退する事が不可能なのはお見通しでしょう。
米国が既に加盟済みならこの手は使えませんが、米国は現在『TPPに加盟すらしていない』つまり部外者ですので十分に可能です。
オバマ大統領は「5年で輸出を2倍にする」と言っていますが、加盟が2〜3年ほど遅れても、日本がTPPに加盟すれば関税撤廃とドル安誘導で充分達成可能でしょう。
米国が脅威と言うのであれは、あの国がこの程度の腹芸すら出来ないと考えるのは間違ってると思いますし、事実これまで米国はもっとしたたかな手段を用いてきている事は、これまでの歴史を見れば明らかです。

TPP賛成派にとっても同様の論調で世論形成が可能です。
経済界も労働組合もTVも賛成に傾いているわけですから、米国脅威論が盛り上がってきたときに世間に対して「米国が問題?なら米国抜きならTPP加盟は問題ないでしょ」と情報にスピンをかければ良いだけです。
それまで「米国に食い物にされるからTPP加盟反対」との論調に心を動かされつつあった人達が「米国抜きならいいんじゃないかな」となるのは非常に簡単ですし、この手のスピンは情報戦における初歩の初歩です。

結果として、TPPの有る無しにかかわらず存在する米国の思惑をTPP反対の根幹に据えたことが、国益を損ない、負け戦につながる事態があり得るのです。

米国の思惑は当然ありますし、それ自体についての懸念は強く同意出来ます。
しかし、この論調は推進派にとって有利な論陣を張る材料になりかねません。
どの国にとっても国益の追及は政府の最も基本的な姿勢です。
他国を犠牲にしても自国を繁栄させたい、自国民の生活を守る為なら他国を食い物にする事も厭わないと言う姿勢は、国際社会において何ら珍しくないものです。
当然米国も自国民及び自国企業の為に外交を行います。それが日本の国益にバッティングすること自体は何ら不思議はありません。
『TPPが日本を壊す』(扶桑社新書)で言及していますが、米国はMBS問題等複数の経済的爆弾を抱えています。
米国はこの「爆弾」による大ダメージを回避する為、また爆発してしまった際に速やかに回復する為に、外需主導の景気回復を狙います。
そして米国が売りたい商品を購入出来る国の筆頭かつ事実上唯一の国が日本です。
当然TPPに限らず米国は日本へ市場開放を要求します。
つまり、米国にとっては日本市場へのアクセス方法が「TPPであろうがFTAであろうが構わない」のです。

「米国の思惑=米国の国益」ですから、これはTPPうんぬんと関係なく“常に存在”します。
TPPによる国益追求が不調ならすぐに別の手段を考えるでしょう。
実際、このブログをご覧の方々でしたら「年次改革要望書」にまつわる顛末等でそれは充分ご存じかと思います。
政府の使命の一つである国益追求が出来ていない日本と違い、諸外国は日本に比べて遥かにしたたかです。
その中でも米国は最もしたたかな国の一つでしょう。
日本の感覚で見ていると国際交渉の場では足下を掬われかねません。
それは政府だけでなく、世論も同様と考えます。

仮に米国が参加しないTPPに加盟したとしても、日本は他の国から奪われる立場にある事はかわりありません。
既に発効しているTPPにおいて、加盟国であるNZの国内が揉めています。
これは新興国有利で先進国不利なTPPにおいて「金持ち国NZ」の国民が他の加盟国に搾取されている事気付いたからです。
日本がTPPに加盟したらNZに替わって搾取される立場に立つのは火を見るよりも明らかです。
新興国は農産物や軽工業品を中心に日本に対して輸出攻勢をかけてくるでしょう。
逆に、相手国の経済規模故に日本側から売れる商品の量は限られています。
さらに円高による日本製品価格の上昇はTPPで廃止される関税より大きいと想定されます。
つまりTPPは『米国の動向に関係なく日本にとってはマイナスにしかならない』のです。
広い賛同を得る為にはこの点を押さえる必要があります。

要は『日本さんが飛び込もうとしている池(TPP)の中にワニ(米国)がいるか、ピラニアの群れ(新興国群)がいるかの違いなだけ』なのです。
ワニとピラニアの群れがいる池に飛び込むのは問答無用で危険ですが、ワニがいなくてもピラニアの群れがいる時点で飛び込むなんて無謀きわまりないといえます。
この構図こそが反対派として多くの一般層に浸透させねばならない点と言えるでしょう。

米国の思惑はあります、しかしそれ以上に「TPP加盟自体が日本にとって大きなマイナスなんだ」と言う事を多くの人に広げて頂ければと思う次第です。



posted by FumiHawk at 11:12| Comment(1) | TrackBack(0) | 情報戦略・戦術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年03月08日

FM・NACK5番組出演の文字起こし 〜TPPについて〜

 Twitterでは告知させて頂いたのですが、去る3月4日(金)23時放送のFM・NACK5セイタロウ&ケイザブロー おとこラジオ」に電話出演いたしました。
 この回は『権力』がテーマだったのですが、その中でTPPついて取り上げる部分があり、「TPPが日本を壊す」監修として私が電話出演いたしました。
 が、いかんせんNACK5は埼玉を中心とした関東圏でしか聞く事が出来ません。
 さてどうしたものかと思っていたところ、放送を視聴した方が電話出演部分を文字起こしして下さいました。
 このエントリーでは、文字起こしされた『つくちゃん』様のご承諾を得て、『“Eye of the Doppelganger”別館』より文字起こし部分を転載させて頂きました。
 10分程の短時間ゆえ、出来るだけコンパクトに要点のみをまとめた内容ですので、TPPに関する知識の入り口として活用して頂ければ幸いです。


――今週のおとこラジオは、『権力』をテーマにお送りしています。ここからは、3月2日に扶桑社から出版、『TPPが日本を壊す』の監修を務められたアナリストの青木文鷹さんにお話を伺ってまいります。それでははじめましてケイザブローです。よろしくお願いします。

青木文鷹(以下青木)「はい、よろしくお願いします。青木です。」

――セイタロウです。よろしくお願いします。

青木「よろしくお願いします。」

――さあ青木さん、まず、すごく基本的なことをお聞きしたいわけなんですが、菅総理になってから急に出てきましたTPPという言葉なんですが、そもそもTPPは、どういうものなんでしょうか?

青木「TPPというのは、日本語に訳すと『環太平洋戦略的経済連携協定』の略になります。ちょっと長いんですけれども。
 2006年にニュージーランド、シンガポール、ブルネイ、チリの4カ国でスタートした協定です。
 このタイトルの中に『戦略的経済連携』とあるように、元々ニュージーランドはそれほど人口が多くないですし、シンガポールも人数は少ないですね、お金は
ありますけれど。
ブルネイもお金持ちの国ですけれども、ここも人数はすごく少ないです。チリは逆に、人数はいるんですけれども、あまりお金持ちではないというか、後進国になりますので。これから発展する国ですので。
 こういう小さな国、世界的に見てプレゼンスが低い国が集まってできているものなんですよね。
 元々、国民の所得はあるが人口が少ない、市場が小さな国と、ある程度人口はあるが経済力が低い国がまとまって、ヨーロッパや日本、それからアメリカに対してプレゼンスをあげることが目的だったわけです。
 これについては序文とか、TPPの原文というのがありまして、メインアグリーメント、主文ですね、要するに会社で言えば定款みたいなものですけれども、ここのなかに実際『16章 戦略的連携』という形で、この目的が明示されています。
 あくまでこのTPPというのは、小さな国が集まって大国と渡り合おうというのが、本来の目的です。
 さらに、関税とか手続きをはじめとする貿易の阻害要因をグループ内で開放して、TPP自体があたかも一つの国であるような、経済の面に関してそういう形で動けるようにすることで、メリットを生かして存在感を高めて経済を活性化しようと、こういうのが目的なわけです。」


――青木さん、その、最初の段階ではそんなに問題ない、決して悪い話ではないんですが、ただ、そこに大国のアメリカだ、あるいは国土は小さいけれども日本、そう、オーストラリアも入ってくるんですよね。そうすると、一番最初の話と変わってきますよね。

青木「全然変わってきますね。」

――TPPの一番最初の初心は忘れ去られてしまいますね。で、問題が起こってくるんじゃないんですか、これから。

青木「そもそも、今行われている会議というのは『拡大会議』ということですね。
 で、拡大会議というのは、どうやって拡大していくかというのも条文のなかに入っているんですけれども、新規に作っているわけではないということが一つ。
 それで、あくまで原則として現在のTPP、これ、一番の目標は原則100%の市場開放をするということが目的なんですけど、これが大原則としてあると。ここについては変わらないということですね。
 で、大きな国が入るというのは、それぞれの国が、思惑があってグループに入ろうと。だから、実際に入れてもらえるかどうかというところからまず話が始まります。」


――なるほどなるほど。でも、影響力があるから、結局それを断ることはできませんよね?

青木「という可能性もあるんですが、今度は逆に自分たちが不利になるんだったら、入れないでグループとして本来の目的どおりにやったほうが得になる可能性も勿論、4カ国にとってはあります。」

――なかなか、菅総理からはこのTPPに対する説明が、今の青木さんがお話になっているような説明が全くないので。だから、メディアも本当にわかって伝え
ているのかね? なにか知らない重要な事実がそこにあるのではないかと思って、青木さんにお電話さしあげたのですが、いかがですか?

青木「まず、菅総理から情報が出てこないのは、先日ですね、国会で公明党の西(博義)議員が質問したときに、TPPの、協定のルールですよね、文書、メインアグリーメント、これ英語で160ページあるんですけれども、これがまず基本になるんですが『これ読んだことあります?』と訊いたら『めくったことはある』と言っているわけですね。」

――また得意の『疎い』というやつですかね。

青木「そうですね。そもそも、日本語の訳すら出てないんです、これ。
 ですから、今議論してらっしゃる方々も、多分ほとんどの人が、英語版をどこまで目を通したかというのはありますし、英語版にあたっていない人だと、日本
語でのデータは今、つい先日私ブログの方で公開したんですけれども、多分それ以外にデータ、日本語でまとまったものはないんですよね、主文に関して。
 ということなので、まずデータが出せないということがあります。」


――ということはメディアも伝えられませんね。

青木「ですので、やっぱりどこが影響するのかというのは、それぞれのポジションの方、例えば農水省だと農業がという話になりますし、経済産業省は経済の話からいきますよね。ですので、網羅した形で検討しているものがあまりないということになります。」

――青木さん、このTPPに参加することで、ズバリお訊きしたいんですけど、日本は得するんですか?

青木「基本的に、得をする人と損をする人といますね。全体として見ると、損をするとは思いますけれども。」

――どんな方が得して、どんな方が損されるんですか?

青木「まずですね、得をするという意味で言うと、貿易、域内のグループの中の人たちから日本に買って来る人ですね、これは当然メリットはありますね。関税が下がりますので。
 で、今度は逆に損をする人たちというのは、農産物の自由化が起こりますので、第一次産業……農業、畜産業、こういうものですね。これは大きなダメージを受けると思います。
 それから、第11章というところに『政府調達』という項目が書いてあるんですが、政府調達というとわかりにくいんですが、これは公共事業です、一番簡単
に言えば。
公共事業その他も入るんですけれども。これは今まで都道府県レベルまでは公開されてたんです。海外の業者が入れたんですね。なんですけど、これを市区町村レベルまでやります。
 ですので、これ国外の業者が安く受注しちゃうと、地場産業とか地元の企業さん、死活問題になりますね。」

――海外の資本が入ってきて、そういう方たちがダムを作ったり例えば道路を作ったりする可能性も出てくるということですか。

青木「そういうことですね。
 ですので、安く作れる可能性もありますが、その分地元にはお金落ちませんので、例えば小学校を作るなんていう時、地元の建築業者が今までやっていたものが、例えばニュージーランドの企業が取れちゃったら、ニュージーランドにお金が流れちゃうわけですよね。
 こういうようなところで、お金が地元に落ちなくなる可能性、そうすると、地方経済は非常に辛い状況になると思います。」


――地方は元々疲弊しきってどうしようもない状況でね、今回これが、疎いなかで妙に菅総理のモチベーションでスタートを切ったりするとですね、これ地方が壊れるっていうことは、青木さん、大げさに言うと、日本が壊れることになるんじゃないですか。

青木「なりますね。
 で、実はこれで得をする人たちというのがもう一人いて、企業ですね、大きな企業。この人たちが得をするので中々話がおかしくなってくると。
 ただ、日本企業というと日本で物を生産してるというイメージですけれど、例えば地域内どこで作っても、日本で作ってもチリで作っても同じ条件になると、
そういうことになりますよね。
そうすると、企業の経営者としては当然人件費の安い海外で作って日本に持ってきた方が利益が大きくなるわけですよ。
 次善の策として考えられるのは、海外から安い労働力、要するに人を連れてきて日本で作ると、こういう話になりますよね。これをやられちゃうと、日本で雇用がどんどん減るんです。」


――これ、ドイツとトルコの関係になるようでいけませんね。

青木「全くそういうことですね。
 実際に、先日大手家電メーカーの方が『このまま円高が進めば国内の雇用を5分の1ぐらいにせざるを得ないだろう』なんていう発言をしてるんですけれども、この上拍車がかかりますよね、TPPに入れば。
 今の経済のアナリストだとか、論調、賛成反対どちらも、企業の経営者がどういう判断をするというところまでは踏み込んでないものですから、その辺でメリットデメリットがちょっと狂ってきてしまうということもありますね。」


――そういう整理をしないまま、このTPPに参加でスタートを切ってしまって、後でまた傷口に絆創膏を貼るという、そういうことだけはやめてもらいたいですね。

青木「でもその可能性が高いですね。」

――じゃないと日本列島全体が絆創膏だらけになっちゃいますもんね。「??」も解決されてないんですから。(??は言葉が被ってしまって聞き取れませんでした。)

青木「日本の形をどうするかという議論ですので、これって。ですので、本来極めて高度な外交力がないとできない話なんですが、予算すらまとまっていない状況ですので、現状でやると非常に致命傷になるんじゃないかと。」

――はい、多分これでかなりTPPに皆さん関心をもったと思いますが、お時間が10分過ぎましたのでそろそろ青木さんとお別れいたしますが、改めて申し上げます。
 扶桑社新書から『TPPが日本を壊す』表紙はオレンジと黒い色でわかりやすいです。働いている一人のイケメンの青年の顔がヘルメットを被ってあります。
『え、僕にも関係あるんですか!?』
『あなたの“食”と“職”が危ない』
 他人事ではないです。青木さん、どうもありがとうございました。

青木「ありがとうございました。」



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