2012年12月16日

【案外少人数】『若い人が投票に行けば世の中変る』と言われるけど、本当に変るのか計算してみた【友達一人でおk】

表題の通りの意見はよく聞かれるのですが、大抵の場合(というか個人的には聞いたこと内が)具体的にどのくらいの人が動いたら世の中変るのかって具体的な数字は出てこないので、今回の選挙が良い機会だと思って計算してみました。

まず、投票で世の中が変るってのは、「投票行動で逆転現象が起こせる」という事と言い替えられます。

そして、逆転現象(というか圧倒的大勝)でどれだけの票が動いたのかを見れば、世の中を変えるのに必要な選挙の票が見えてきます。

衆議院の小選挙区制が導入され、現在の定数(480人)になってから、今回までに下記の4回の衆院選が行われています。
2000年 神の国解散選挙(自民勝利)
2003年 自民党定年制導入選挙(自民勝利)
2005年 小泉郵政選挙(自民大勝)
2009年 政権交代選挙(民主大勝)

この4回の衆院選挙で、政権交代選挙と小泉郵政選挙が俗に言う『大きな風の吹いた選挙』です。
それぞれの選挙での自民・民主それぞれの得票率は以下の通り。
2000年 自民 36.22%、民主 26.70%、自民と民主の得票差 9.52%
2003年 自民 40.52%、民主 36.93%、自民と民主の得票差 3.58%
2005年 自民 44.17%、民主 34.45%、自民と民主の得票差 9.73%
2009年 自民 34.20%、民主 45.55%、自民と民主の得票差 11.35%

得票率は小選挙区と比例の議席数に応じて補正を掛けた数値で、小選挙区の得票率と若干ずれます。
得票率は投票総数に占める得票の割合ですので、有権者数に占める割合ではありません。

上の数字を見ると、風が吹いた選挙では勝ち負けの差はおよそ9〜11%位だという事が分かります。
2000年も票差が9.52%と大勝に近い格差があるのですが、このときは保守党や自由党がある程度の票を持っていった為、結果として大勝にならず、逆に自民も議席を減らす事になりました。
これらを考慮すると、およそ11%の得票がまとまって動くことで大勝が発生することが分かります。

つまり、大勝させるには11%に相当する票を勝つ側に上乗せすればよく、大勝させない為には逆風下でも11%に相当する票を負けそうな側に載せれば僅差の勝負が出来る事になります。
この得票率は「投票者数に占める割合」ですので、上記の結果からは労働組合や宗教票を持っている政党にとって投票率が下がることが有利に働くという側面も見てとれます。

さて、実際に風を起こして世の中を変えるにはどのくらいの人数が必要なのでしょうか?

近年の有権者数はおよそ1億人前後で推移していますので、便宜上各選挙の有権者数は1億人とします。
2000年 投票率 64.45%、 得票差  9.52%、 推定人数 約614万人
2003年 投票率 59.86%、 得票差  3.58%、 推定人数 約214万人
2005年 投票率 67.51%、 得票差  9.73%、 推定人数 約657万人
2009年 投票率 69.28%、 得票差 11.35%、 推定人数 約786万人

大体、650〜800万人程度が「風」を起こしていると言えます。
では、若者にはどれくらいの「風」候補票が眠っているのでしょう。

2012年の世代別有権者比率は以下の通りです。
 20代   12.92%
 30代   16.85%
 40代   16.62%
 50代   15.00%
 60代   17.55%
 70代   12.79%
80代以上  8.26%

年金世代(60歳以上)は全有権者の38.6%を占めており、確かに世間で言うように「高齢者に有利」である事は間違いではありません。
一方、若者(20〜30代)は29.77%と高齢者に比べてかなり少ないと言えます。

これだけ見ていると“やっぱり若者が世の中変えるなんて…”といった風に見えてしまうかもしれません。
しかし、実はそれは大きな読み間違いです。

高齢者の投票率は軒並み8〜9割です。
つまり、高齢者の投票とは現在の投票結果を作り出している「固定票」に近い存在なのです。
高齢者に残された余剰票は殆どなく、これ以上世の中の流れを変える力はありません。

一方、若者の最近の「推定未投票者数」は以下の通りです。
2000年 20代 約797万人、 30代 約728万人、 合計 約1524万人
2003年 20代 約832万人、 30代 約830万人、 合計 約1662万人
2005年 20代 約695万人、 30代 約678万人、 合計 約1373万人
2009年 20代 約653万人、 30代 約609万人、 合計 約1262万人

「風」に必要な650〜800万人を遥かに超える未投票者数が存在しています。
この票は「これまで存在していなかった未知の票」です。
まさに風を起こすことが出来る票と言えます。

政権交代選挙と郵政選挙の投票率が大体7割弱、若者の投票率と平均投票率との乖離は、20代で2割前後、30代で1割弱です。
仮に20代30代の投票率が“全体の投票率と同じ(=2割程度上昇)”になったら、約400万票弱が選挙の現場に追加されることになります。
これが負けた勢力に加わるだけで圧勝はなくなり僅差の勝利となりますし、優勢の勢力に流れれば圧勝を引き起こします。
若者の投票率がほんの少しだけ増加し、投票率が平均レベルになっただけで、若者の投票は働組合や宗教団体に匹敵する影響力を持てるのです。

これだけ見ても“投票に行っても世の中に影響を与えられない”という意見が嘘であることが分かります。

もうちょっと大きな事を言えば、投票に行ってない若い人達の『半分ちょっと』が投票に行くだけで、郵政選挙や政権交代選挙で起ったあの雪崩現象が発生します。
たった半分ちょっとが行くだけ・・・世の中変えるって実は案外遠い話ではなかったりします。

「半分ちょっと」を具体的に言うなら、20代投票率が3〜4割程度、30代が5〜6割ですから、いつも投票に行ってる20代の人が投票に行かない友人を一人連れて行って、いつも投票に行っている30代人の2人に1人が投票に行かない友人を一人を投票に連れて行けば、世の中が変るという事です。

世の中を変える為に説得しなきゃいけない友人の数はたった一人…ね、簡単でしょ。

若い人が世の中を変えるのは決して不可能ではありません、それどころか案外簡単にできるのです。
なので、若い人は投票に行かない友人を誘って選挙に行きましょう。

特に女の子は是非「選挙に行かずに斜に構えていることが格好いいと思っている男の子」を誘ってあげて下さいw
そうすると、いろいろ捗り・・・もとい、きっと世の中変りますから(^^)
ラベル:選挙
posted by FumiHawk at 16:23| Comment(78) | TrackBack(0) | 政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年12月13日

最高裁裁判官国民審査 -衆議院総選挙と同じ位大切な選択-

12/16、選挙と同時に『最高裁裁判官国民審査』が行われます。
これは、最高裁の裁判官に不適切な人が就任している場合に、その状況を改善する為に行われます。
最高裁の裁判官は、任命後初の衆議院議員総選挙の投票日に国民審査を受けます。

審査の方法は、衆院選の投票時に審査用の投票用紙を渡されます。
この投票用紙には裁判官の氏名が記されており、「最高裁の裁判官として不適切だな」と思う裁判官の氏名の上に×印を書き入れます。
×印が投票の過半数を越えると、その裁判官は罷免されます。

これは憲法にも記されている国民の権利であると同時に、我々の社会を構成する重要な問題でもあるのですが・・・ほとんど関心を向けられていません。
最高裁判所の判例は事実上の法律と同じような扱いを受けますので、最高裁でおかしな判決が出ると以後の社会に多大な影響が発生します。
政治家と同様に、最高裁判事も日常生活に直接的間接的な影響を与える存在です。
にもかかわらず話題にもほとんど取り上げられず、しかもこれまで「国民審査で罷免された裁判官は一人もいない」というのはある意味異常だと言えます。

この辺りの話を昨日ニコ生で話したのですが、その時に出した「裁判官の傾向をまとめた表」を欲しいと言うコメントが多かったので、下記に掲載します。

om000001.jpg
(クリックすると画像が大きくなります)

表は大体観て分かるとおりです。

「国歌起立職務命令」は君が代を歌ってる時に立たなかった“公立学校の教師”を処分することについてです。

一票の格差の「違憲」と「違憲状態」は、それぞれ「違憲だから即刻解消しろ」なのか「違憲だけど解消するかどうかは政治次第」という違い。

「猥褻画像へのURLリンク」は、猥褻画像そのものではなく画像へのリンク(文字列)を貼る事自体が処罰の対象となるかどうかです。この件は児童ポルノ絡みの案件なので、特に「思想>技術」となっている可能性があります。

「まねきTV」は、まねきTV裁判での判決です。この事件はソニーが販売していたネットを回して遠隔地でテレビを視聴できるようにするための製品“ロケーションフリー(ロケフリ)”を使い「1対1の遠隔視聴」をサービスとして提供するビジネスに対する判断です。ロケフリは2006年2月3日「経済産業省第1回ネットKADEN大賞」を受賞しており、商品として問題無いとされていたものを利用して行われた事業が差し止めとなりました。
この問題では、地裁、知財高裁では棄却されていたにもかかわらず最高裁判断で逆転している点が注目です。

手続き等の違反案件については、同様の問題の案件においてルール重視か状況を重視かで分けてあります。

死刑観は、死刑に忌避的かどうかを纏めたものです。×は忌避的、△は若干、○は事件の内容次第では死刑も辞さずという感じです。

その他の項では各裁判官が取り扱った特徴的な事件などを挙げています。


「猥褻画像へのURLリンク」「まねきTV」「ウィニー作者幇助事件」などに共通するのは、今後増えるであろうハイテクや新技術に対する理解が裁判官によって大きく異なるという事です。

また「沖縄ノート名誉毀損訴訟(大江健三郎の例のアレ)」などは、思想的な側面も大きく絡んでくる可能性があります。


最高裁判事の情報はあまり多くない為、国民審査公報だけでは足りずに収集分別して表を作るのに苦労します。
本来このようなことはメディア、特にNHKが訳の分からん外国ドラマとか流す暇があるのなら率先してやるべきではないかとおもうのですが・・・

いずれにせよ、最高裁裁判官国民審査は重要です。
この記事が大事な判断の一助になれば幸いです。

【追記】 - 国民審査は棄権できる -

誰を信任したらいいか分からない、でも全員×にするのもちょっと・・・
そんな場合には『国民審査を棄権する』という方法があります。
衆院選での白票投票と異なり、信任投票ですので、棄権は立派な意思表示の一つです。

棄権方法は
 投票用紙を受け取る前に「国民審査は棄権します」と宣言するだけ


投票用紙を受け取ってしまった場合は、棄権する旨申し出て投票用紙を返却刷ればOKです。



【関連情報】

(↓昨日の私のツイートを纏めたものです)
「最高裁判所裁判官国民審査の『重要性』と、誰も教えてくれない『棄権の方法』 #seiji」

posted by FumiHawk at 10:16| Comment(13) | TrackBack(0) | 政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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