2010年02月16日

まさに『理を以て非に落ちる(*1)』 -枝野大臣は小沢情報戦略の落胤-

世間では枝野大臣は「反小沢陣営の急先鋒」と目されているようです。
また、民主党内で唯一小沢氏に物申すことができるとされる黄門様こと渡部恒三氏が「頑張ってくれ。こんなにうれしいことはない」(*2)と歓迎、TVの取材に対しても反小沢派の攻勢を匂わせる発言していることもあり、今回の大臣就任は反小沢派の勝利との理解(*3)が主流で、基本的には歓迎する意見(*3)が大変多く見受けられます。

これで間違いない?
本当にそう思う?


この問いに「Yes」と答えたそこの貴方、すごく真面目で良い人なんですね。
でも情報操作にもっとも弱いタイプですのでお気をつけください。

「No」と答えた貴方、周りから「いい性格してる」とか言われたことありません?
でも情報戦には比較的耐性がありそうですが、場合によってはころっと騙されてしまうかもしれませんから気をつけて。

「わからん」と答えた貴方、答えた理由が考えるの面倒だとかでなければ、その姿勢は対情報戦においてはもっとも耐久力がありそうです。

上記の問いの答えはこのエントリーを最後まで読んでいただければわかると思います。



さて、本題に入りましょう。


各種報道情報を突き合わせてわかる事実は次の通り。


・枝野議員が行政改革推進大臣に就任

・渡部議員をはじめとする反小沢派が歓迎

・鳩山首相は小沢氏と枝野入閣について会談、小沢氏は「異論はない。」と了承(*5)

・枝野大臣、渡部議員は反小沢陣営の代表的存在



この内容に関して、特に異存はないと思います。
実際、小沢応援ムード一色の民主党内で小沢氏の進退に言及していた(*6)のは実質渡部議員だけですし、枝野議員も反小沢派と目されています。
その反小沢陣営の一人が入閣し、後ろ盾と考えられる「ご意見番がそれらしい発言をしてることから、「小沢氏独裁体制の崩壊」と世間が色めきだつのも無理はないところです。

だが、ちょっと待ってほしい(築地辺りの瓦版屋風)
実際のところはどうなのか?

最初に分析の結論から言えば「小沢氏の戦略勝ち」というところです。
もちろん渡部氏をはじめとする反小沢派の期待は嘘ではなく、今回の入閣を枝野大臣も周囲も小沢氏支配の一角を崩したと受け止めているでしょう。
また枝野大臣や反小沢派の名誉のために言っておくと、彼や周囲が変節して小沢氏の軍門に下った訳でもありません。
たぶん彼らは小沢氏の独裁を内閣の中から切り崩してやろうと意欲満々だろうと思います。
(ちなみにこの意欲は任命式での服装からも見て取れますが、政治家の服装と情報戦略については後日エントリー予定)

また、マスコミや評論家の方々が好きな「政局」および「政治力学」とやらから見れば、反小沢派勝利の結論になると思います。
しかし政局や政治力学と言う視点は、基本的に目先の陣取り合戦ですので「戦術」レベルのお話しです。
さらに、これらの視点には「人」と言う要素が決定的に書けています。
これは「力学」等という言葉を使う時点でも明らかで、政治が物理法則であるかのようなものに見えてしましますし、また政治力学という言葉を使う人にはそう見えているのでしょう。

ただ、これを人に重点を置いた情報戦略の点からみると、まったく景色が変わります。

つまり『「譲歩した=負けた」ではない』のです。

戦略の目的によって、同じ局面でも用いる手段(戦術)が変わってきます。
最終目的地を「党内での主導権争いに勝利すること」とするか、「民主党を生き残らせて、自分を守る」とするかによって、当然戦術は変わります。

現在小沢氏は引き続き検察との対決状態にあり、民主党が与党であることが大きなアドバンテージになっています。
特に選挙のプロとして党内を掌握している彼にとっては、この「与党民主党」を維持することが、自分の身を守るためにも最も重要視しなければならない点です。
また自分に協力してくれた勢力のためにも、ある程度彼らの希望する方向で政治を行わなければならず、これを実現するためには民主党の衆参単独過半数が最も望ましい形です。
単独過半数の目処がある限り、公明との連立は想定していません。
ですので、タムコーの引き抜きといった工作を行っているわけです。
(衆参単独過半数が目的等この辺りについてはTwitterでも以前発言していますが、詳細はまた今度)

一方の反小沢派は、小沢支配で自由な行動どころか発言すら制限されており、この閉塞状況を打開することが民主党再浮揚の必須条件だと考えています。
これは、過去の反小沢派および雑誌等で紹介されている匿名での民主党議員の発言を見ても明らかです。

そして、両者に共通するのは「民主党政権の維持」です。

反小沢派は「小沢支配の一角を崩すことで、民主党政権を維持したい」と考え、
小沢氏は「とにかく自分のコントロールが効く形で民主党政権を維持したい」と考える。


前者は目的を達成するには「反小沢派の入閣」を戦術として選び、結果として成功しました。
ここまでを見ればマスコミ等の見解の通り。

では、これが小沢氏にとってはどのような意味を持つのか。
状況分析からすれば、小沢氏は「次の参院選に負けなければ自分の勝ち」と考え、それを現実化するための戦略に基づいて動いています。
選挙に負ければ、自分の影響力が著しく低下することを本人が一番理解しているからです。
そして、選挙に勝つためには「現在民主党に失望しつつある、政権交代を後押しした“おQ層”に再度応援してもらう」必要があるのは明らかです。
(衆院選の実際の得票率は、議席数ほどの差が無く、僅差で勝ちを拾った部分は“おQ層”の影響です)

以前のエントリー(おQ層を説得する『たった一つの冴えたやり方』 -情報戦戦術01- )でも言及しましたが、おQ層は極めてマスメディアのイメージに影響されやすい層で、この層は情報を収集し吟味すると言う習慣がありません。
現状であれば、民主党はイメージさえ改善出来れば選挙に勝つことは難しくても、負けることはないと言えます。
これは「衆院選で民主党に投票してしまった自分の行動の正当化」心理が後押ししているためです。

よって、小沢氏はこの理解をベースに戦略を立て、現状で「自分の影響力低下を極力避け」なおかつ「世論の圧力を緩和し」さらに「党内の不満を軽減する」戦術を採りました。

つまり「反小沢派の枝野議員の行政刷新相就任」です。

反小沢派の枝野氏を入閣させた事により「党内の不満を軽減」し、行政刷新相という“改革推進ポスト”に若い議員を当てて民主党の自浄作用を演出して「世論の圧力を緩和」し、無任所大臣という“どうでもいいポスト”を反小沢派に与えることで自分への辞任圧力を弱め「自分の影響力低下を極力避けた」わけです。

無任所大臣というお飾りポスト一つ与えるデメリットで、これだけ多くのメリットを享受出来るなら、その程度の出血は許容出来るレベルです。
さらに大臣に就任すれば枝野大臣の動きは制限され、本人の意志とは関係なく小沢氏をある程度ようごせざるを得ない、そうしなければ内閣が維持出来ないからです。

黄門様はじめとする反小沢派は本気でケンカに行ってポスト勝ち取ったでしょう。
そしてポストを勝ち取った。
ただし、反小沢派の戦術的勝利は小沢氏にとって「くれてやっても良いレベル」で、しかも「ポストをやるデメリットと、そのことが世論に与えるメリット」を比べて、メリットの方が大きいと判断した結果です。
これは頑なに入閣を拒んできた枝野氏を、「異論はない」で入閣させたことで明らかです。
そして、入閣後の枝野大臣の動きを見ればこの小沢氏の戦略がいかに有効であったかがわかります。
(もっとも、この策の効果がどこまで続くかは判りません。その意味で前出の問いは「わからん」が最も正解に近いと言えます。)


この一連の動きは「視点の置き方の重要性」を知る上で、非常にわかりやすい事例だと思います。
そして、既存の評論やメディアの限界点を知る上でもわかりやすい事例であると言えます。




・・・というわけで、皆さん枝野大臣就任で「小沢m9(^Д^)プギャー 」とか言ってる場合じゃないんですよorz


(*1)『理を以て非に落ちる』
道理で論に勝ちながら、実際には負てしまうことです。今回の事例では「損して得取れ」みたいな感じ。
「理に勝って非に落ちる」とも言います。

(*2)『刷新相に仕分け人、反転攻勢の“カンフル剤”』(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20100211-OYT1T00263.htm

(*3)『「反小沢」枝野氏入閣の理由は? 』(日テレニュース24)
http://news24.jp/articles/2010/02/10/04153321.html

(*4)『【主張】枝野氏入閣 「行革に本腰」なら歓迎だ』(産経ニュース)
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/100211/stt1002110255000-n1.htm

(*5)『枝野氏を行政刷相に辞令、小沢氏「異論はない」』(財経新聞)
http://www.zaikei.co.jp/article/biznews/100210/43892.html
   『枝野行刷相が就任 首相、小沢氏から事前了解』(日経ネット)
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20100210NTE2INK0710022010.html

(*6)『渡部元衆院副議長「歴史に残る決断すると思う」小沢氏辞任を示唆』(産経ニュース)
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/100206/stt1002062334007-n1.htm
posted by FumiHawk at 10:19| Comment(6) | TrackBack(0) | 情報分析 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
反対勢力を取り込むのが最も自分の権威権力を高める方法ですしねぇ。
おざーさんの真骨頂じゃないですかぉl政策的に相容れなかった輿石とかもヨイショされてるんだかなんか握られてるんだかすっかり仲良しなようですし?
Posted by ネコうよ at 2010年02月16日 10:57
>ネコうよ

小沢氏の目的は政治じゃなくて政局ですから。
なんにせよ、仲良きことは美しき・・・って、どう見ても真っ黒じゃねぇか(爆)
Posted by @FumiHawk at 2010年02月16日 11:14
幹事長辞任して傀儡を立てた方がガス抜き効果が高そうなんですが、どうなんですかね。
あからさますぎて流石に叩かれるのかな。

Posted by dai at 2010年02月16日 13:15
>dai

ガス抜きだけなら辞任して傀儡立てるのが一番ですが、それやるにはまだ早いんですよ。
なにせ代りの人材がいないので、乾坤一擲のタイミングでやらないと。
Posted by @FumiHawk at 2010年02月16日 13:35
 枝野氏入閣は、長編漫画でいうテコ入れみたいなものかなと思いました。実際に、周りのおQ層は喜んでいました。
 しかし、増税と子ども手当の財源を教えたら、以前よりさらに憤慨してました。期待のあとに絶望的な情報を教えると怖いことになりますね。
Posted by @conan015 at 2010年02月16日 21:53
>@conan015

うん、だいたいあってる(爆)
Posted by @FumiHawk at 2010年02月16日 23:23
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