2010年05月24日

2010口蹄疫アウトブレイクに関する分析(5/7暫定速報版) 2/4

【口蹄疫とは】

1)口蹄疫の概要

 口蹄疫とはピコルナウイルス科アフトウイルス属に分類される口蹄疫ウイルスの感染による急性熱性伝染病で、牛、水牛、豚、羊、山羊を始めとするほとんどの偶蹄類の動物(蹄が偶数の四つ足動物)が感染する。
 症状等は他に譲るが、死亡率も高く、極めて伝染力が強く、ワクチンは存在するがワクチンのみでは根絶が困難で、仮にワクチンを使用した場合、免疫を獲得した家畜が発病せずに感染した状態となり、そのまま長期間持続感染するキャリア化にいたる問題も起こるため、同一牧場で感染例が発見された時点でその牧場で飼育されている家畜は経済動物としての価値を失う。
 現在ほとんどの先進国は口蹄疫にたいしては移動制限と殺処分方式により防疫を図り、常在化を防ぐことを対策の基本方針にしている。ワクチンを使用すると感染が終息してもすぐには清浄国と認められず、長期間影響が残る。

 口蹄疫は一度発生すると,前述の通り国あるいは地域ごとに厳しい生畜と畜産物の移動制限が課せられるため、畜産物の及び発生地周辺の農産物の移動にも多大な影響が起こり、直接的な問題だけでなく間接的に生じる社会経済的な被害も甚大なものとなる。同時に感染拡大防止のために国際物流にも大きな影響を及ぼす。
 国際獣疫事務局(OIE)は、本病を最も重要な家畜の伝染病(リストA疾病)に位置付けている事からも、口蹄疫が畜産産業にとって極めて危険なウィルスであることがわかる。
 日本においても口蹄疫は家畜法定伝染病に指定され、発生次第移動制限と殺処分で速やかに対処することとなっている。畜産家にとっての資産を強制的に処分する行為が都道府県知事の権限ではなく、家畜保健衛生所の家畜防疫員が患畜と確認し次第直ちに殺処分することが法で定められている。言い換えれば口蹄疫が「時間との勝負」がもっとも重要な伝染病であると言うことを示している
 
2)口蹄疫の特徴

 口蹄疫は極めて伝染性の強いウィルスによる家畜伝染病である。その特徴を列挙すると以下の通りとなる。

 A)伝染性が極めて強く、感染の恐れがある場合殺処分を行わねばならない
 B)人に感染しないし、ごく稀に感染しても軽い発熱+αで終わる
 C)口蹄疫ウィルスは生存日数が長く(最大9ヶ月)衣類や飼料の付着からも伝搬する


 人に感染しない伝染病であるにもかかわらず、全世界的に極めて厳しい対応を取ることが定められている背景には、『極めて強力な伝染性』が原因である。
 牛、豚を含む偶蹄類は畜産における主力商品で、封じ込めに失敗すると一国のみならず周辺地域の畜産業が壊滅する。
 さらに、鹿など野生生物にも感染する(拡大阻止が難しい)、衣服や車、稲わらなどに付着した状態でも数週間から半年以上ウィルスが生きながらえることもあり、状況次第では発生地域に関連する畜産以外の物流にも大きな影響を与える。
 例えば、九州全土で口蹄疫が蔓延して終息の目処が立たなかった場合、この地域を通る輸出貨物の消毒等が義務づけられたり、海外から九州への直接的な物流のストップすら可能性としては否定できない。
 語弊を恐れず言い替えるならば、世界的には『口蹄疫は鳥インフルエンザと同等以上の危険性をはらんだウィルス』と認識されている。



 
3)口蹄疫発生後の対応

 口蹄疫が発生した場合、初期段階での封じ込めに成功できれば比較的被害は軽微で済むが、早期封じ込めに失敗すると問題解決までに莫大なリソースが必要となる。

 2000年に国内で口蹄疫が発生した際には、迅速な対応が功を奏し、約700頭を殺処分、40億円弱の対策費用で事態は収束した。
 一方、2001年にイギリスで発生した事例では初期封じ込めに失敗、600万頭の殺処分を行わねばならなくなり、被害だけで1兆1千億円、対策費用は3兆円を越える規模の事態となった。

 今回の対策として必要なのは「(1)感染拡大の防止」、次に「(2)感染源の処分」、それから「(3)被害の保証および再発防止」である。
具体的には下記の内容に当たる。

 (1)「人モノの移動制限」「徹底した消毒」
 (2)「殺処分」「殺処分した家畜の処理」
 (3)「殺処分した家畜の買い上げ」「資金手当ての保証」「新規に家畜を買い入れるための補助」
    「消毒薬等の備蓄強化」


 対策の成否は(1)および(2)がどれだけ迅速勝つ徹底して行えるかにかかっている。そしてこれらを迅速に行うために(3)に関して「全面的に保証することを表明」する必要がある。保証について具体的内容は後回しでよいから畜産関係者への安心を与えることが必要である。
 しかし現在に至るも政府の対応は鈍く、速やかな殺処理が必要であるにもかかわらず補償額算定の作業が進まないため畜産家は殺処分を行えていないため、口蹄疫の抑えこみ体制は整っていない。
 また今回は殺処分する家畜は非常に多いため、既に埋却処理の場所が確保できない事態に陥っている。宮崎県知事は国有地での埋却処理を要望しているが政府からの回答はない。
 コスト面から見ると埋却処理がよいが、埋却場所の確保が極めて困難で、埋却された家畜は腐乱して衛生状態を極めて悪化させると言う点を考慮すると、焼却処理を軸に検討する方が良い。この場合、既存施設での焼却は移動制限があることから、現地に仮設焼却炉を建設して対応することが望ましい。
 移動制限は特にマスコミに行う必要がある。県に対しても早急に資金提供を行うと同時に、畜産関係者に対して一時金を支払う等も検討に値する。

口蹄疫被害予想20100507.jpg


ラベル:口蹄疫 情報統制
posted by FumiHawk at 10:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 情報分析 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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