TPPにまつわる議論は、多くの方々が「農業問題」と受け取っています。
これは初期段階から積極的に反対の論陣を張ってきた農水省とJA、農業関係者の皆様の努力に拠るものですが、残念ながら現時点では『TPP=農業問題』の構図自体が反対支持の広がりを狭くしてしまっています。
ここへ来て農業以外に医療関係からの反対意見が出ておりますが、これも端から見ればポジショントークとしてみられてしまう部分があります。
これらは全て情報不足によるものです。
先日も書きましたが、翻訳文すらない状況で一部分のみのデータを元に議論していればこのようになるのは致し方のない事と言えます。
とは言うものの、問題の本質がどこにあるのかは重要ですし、多くの人の共感を得る為にはTPP問題が自分のことであると認識して頂く必要があります。
そこで「TPP加盟で不利益を被るのは誰なのか?」が非常に大切なポイントになります。
詳細は今月末に扶桑社新書より発売される『TPPが日本を壊す』に譲りますが、具体的にどのような人達が不利益を被るのかを列挙してみます。
《不利益を被る人達その1・農業関係者》
説明するまでもないでしょう。農業分野の開放により農業分野は深刻なダメージを受けることになります。
現在、この分野が最も話題となっていますが、実際はそれも不利益を被る人達の極一部です。
《不利益を被る人達その2・地方の建築業関係者》
TPPの11章には「政府調達の開放」が明記されています。
これまでも、WTOの関係で政府及び都道府県レベルでの開放は行われていましたが、TPPでは市区町村レベルも開放の対象になります。
同時に、小さな規模の工事は開放の除外対象とされていましたが、この基準金額が大幅に低くなります。
地方では公共事業が地域経済の多くを占めている例は珍しくありませんので、この部分を開放すると中〜小規模の建設業およびその関係者は大打撃を受けることになります。
《不利益を被る人達その3・全国のサラリーマン》
TPPに加盟すれば関税等の撤廃で域内が全て国内と同じ条件になります。
日本で作らなくても、海外から輸入した方が安い場合、企業としては輸入を選択することは何ら不思議ではありません。
そして、この環境では『国民の利益と企業の利益が相反する』のです。
日本企業は生き残りの為に、海外工場で生産した「日本製品」を逆輸入してくることになります。
特にこのまま円高が進むと考えられている状況では、域内であれば条件が同じなので国内生産を海外工場に振り分けて安い商品を流通させることになるでしょう。
『日本人の雇用を減らすこと=企業の利益』という構図が出現しても何ら不思議はありません。
現に先日の報道では、某メーカーが「このままでは国内の雇用が1/5になる」と発言して話題になりましたし、企業が海外生産→逆輸入の選択を行わない理由が全くありません。
当然、海外で生産可能な物品やサービスに関する企業は全てこの選択を迫られるでしょう。
そうなったら、人数的に最大の不利益を被るのは『サラリーマン』なのです。
TPPに関して、どうして連合をはじめとする労働組合が大きな声を上げて反対しないのか、私には全く理解に苦しむところです。
《不利益を被る人達その4・全国の医療関係者》
医療関係者もTPP反対の論陣を張り始めましたが、この分野も影響を受けます。
特に労働力の流入、外国資本の参入が影響しそうです。
・・・とまあ、簡単に上げても不利益を被る人達はこれだけいます。
利益を得られる人達の方が圧倒的に少ないでしょう。
TPPに反対するなら、これらの人達全てが声を上げねばなりません。
問題は農業だけじゃない、日本人のほとんど全てが不利益を被るのです。
ラベル:TPP
TPPと関係ないレベルでなら進むでしょうが、TPPと逆輸入へのインセンティブとは因果関係が見受けられないのですが。
海外企業が海を越えるコストを負担してまで日本の小規模の公共事業をこぞって受注しに来るなんて、まず考えられないですね。
海外企業が海を越えるコストを負担してまで日本の小規模の公共事業をこぞって受注しに来るなんて、まず考えられないですね。
医療の分野も特に困ることは無いと思いますが。外国資本の参入って言っても日本の法律に則ってやらなければならないからデメリットではありません。