2011年02月26日

環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)私訳 『第8章 貿易の技術的障害』

先日のエントリーに書いたとおり、TPPメインアグリーメントの私訳文を公開します。
今後の公開は必要に応じて行いますので順不同になると思います。
また、各章の分量も多いので、場合によっては章を分割して公開する場合も御座いますのでご了承下さい。

注)この訳文は当ブログ独自で行ったものです。
   著作権は放棄しませんが、非商用のみ自由引用とします。
   引用する場合、トラブル防止の為必ず出典を明記して下さい。






環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)『第8章 貿易の技術的障害


■第1条 定義

1 この章において、

 「技術規則の同等性」とは、一国以上の加盟国が、別の加盟国の技術規則が自国の規則の正当な目的
 を達成することを認めることを意味する。

 「規制当局」とは、産品に適用される適合性評価手続及び技術規則の準備もしくは採択に責任を持つ局を
 意味する。

 「技術規則」には、規制当局が、性能基準型規制に関わる必須条件を満たすと認める規格も含まれる。

 「TBT協定」とは、WTO協定の一部である、「貿易の技術的障害に関する協定」を意味する。

2 TBT協定付属書Tにおける定義は、“必要な変更を加えて”この章に取り入れられその一部を成す。



■第2条 目的

 この章の目的は、TBT協定の実行の助成と、規格及び適合性に関するAPECの取組みの拡大を通して、貿易の増加と円滑にすることである。可能な限り、加盟国団は次の方法によって順守コストの削減を目指す。

(a) 加盟国団内の産品の貿易に対する不必要な技術的障害を排除する。

(b) 産品に適用される適合性評価、技術規則及び規格に責任を持つ加盟国の規制機関の間の連携を
   強化する。そして、

(c) 貿易の技術的障害の影響に取り組む枠組みを提供する。



■第3条 範囲

1 この章は、2及び3に規定されている場合を除き、加盟国間の産品の貿易に、直接的又は間接的に
  影響を与える可能性のある、全ての規格と技術規則、そして適合性評価手続に適用される。

2 この章は、第11章(政府調達)で取り扱う当該事業体の消費又は生産の要件のために、政府事業体が
  用意する技術仕様には適用されない。

3 この章は、第7章(衛生植物検疫措置)で取り扱う衛生植物検疫措置には適用されない。

4 この章の如何なる規定も、不達成が生み出す恐れのあるリスクを考慮に入れた正当な目的を達成する
  ために必要な、TBT協定に基づく権利と義務に従って、技術規則又は規格を採択あるいは維持するこ
  とを阻害しない。これは、人間の健康又は安全の保護、動植物の生命又は健康の保護、環境の保護、
  詐欺的行為の防止、国家安全保障要件を確実にするために必要な技術規則を含む。



■第4条 貿易の技術障壁に関する協定の支持

 加盟国団はTBT協定に基づく、互いの既存の義務と権利を支持する。



■第5条 原産地

1 この章は、その原産地に関わらず、加盟国間で売買される全ての産品に適用される。

2 1に関わらず、加盟国は、費用のかかる審査手順の導入を回避するために、そしてその技術規則が
  TBT協定に適合する限り、技術規則の適用を通して非加盟国の産品に特別の配慮を与えることが
  できる。これは、第8章第11条の2に定める連絡窓口を通じてその他の加盟国に通知される。



■第6条 貿易の円滑化

1 加盟国団は、互いの市場へのアクセスを容易にすることを目的として、基準、技術規則及び適合性
  評価手続の領域での共同作業を増強する。特に、加盟国団は、特定の問題又は部門に適した加盟
  国間の構想を明確にするよう努力する。当該構想は、相互承認を通した協力並びに、例えば技術規
  則及び規格の同等性又は調和、国際規格の調整、供給業者の適合宣言に対する信頼、適合性評
  価機関に資格を与える認定の利用等のような、規制問題に関する協力を含めることが出来る。

2 加盟国が明らかにする新たな取組みは、国際規格の利用、透明性、情報交換、順守コストの削減の
  促進に焦点を合わせる。



■第7条 国際規格

1 加盟国団は、関連国際規格が存在する、又はその完成が近づいている場合、技術規則及び関係適合
  性評価手続の下地として、国際規格又は国際規格の関連部分を利用する。ただし、当該国際規格や
  その関連部分が、正当な目的を達成するために不適当又は非効果的な場合を除く。

2 この点において、加盟国団は、2002年5月23日のG/TBT/1/Rev.8の第9章「貿易の技術的障害に
  関する協定 第2条、5条及び付属書3に関連する国際規格、指針及び勧告の策定のための原則に
  関する委員会決定」に示すWTOの貿易の技術的障害に関する委員会の決定を適用する。

3 加盟国団は、技術規則の基準となるであろう当該機関内で策定される国際規格が貿易を円滑化し、
  国際貿易に不必要な障害を作らないことを保証する国際標準化機関への参加を背景に、必要に
  応じて、互いに協力する。



■第8条 技術規則の同等性

1 各加盟国は、たとえ、その技術規則が自国のものと異なろうとも、別の加盟国の技術規則を同等のもの
  と認めることを前向きに検討する。ただし、その技術規則が、正当な目的の達成及び同水準の保護の
  実現において、自国の技術規則が生み出すのと同等の結果を出すことが条件である。

2 加盟国は、別の加盟国の要求に応じて、その加盟国の技術規則を同等と認めない理由を説明する。



■第9条 適合性評価手続


1 加盟国団は、以下の事項を含む、適合性評価手続の結果の受理を円滑にするための幅広い仕組みが
  存在することを認める

 (a) 供給業者の適合宣言への輸入側加盟国の信頼。

 (b) 別の加盟国の領域で行われた適合性評価の結果の加盟国一国による一方的承認。

 (c) 互いの領域の適合性評価機関の間の協力的な取り決め。

 (d) 別の加盟国の領域に位置する機関によって実施される適合性評価手続の相互承認。

 (e) 適合性評価機関に資格を与えるための認定手続。

 (f) 適合性評価機関の政府指定。そして、

 (g) 重複を避け費用対効果の高い、行政の効率性を高める解決策の考案。

2 加盟国団は、適合性評価結果の受理を円滑にする仕組みの範囲に関する情報交換を強化する。

3 加盟国団は、加盟国間で適用する適合性評価手続が、不適合が生み出す恐れがあるリスクを考慮に
  入れて、製品が適用される技術規則に沿うという信頼性を輸入側加盟国にもたらすために必要である
  以上の制限をしないことを保証することによる、貿易の円滑化を確実にするよう努める。

4 適合性評価手続の結果を受け入れる前に、そして互いの適合性評価結果の継続的信頼性に対する
  信用を強化するために、加盟国団は、必要に応じて、例えば関係する適合性評価機関の専門的能
  力のような問題について協議できる。

5 加盟国は、別の加盟国の要請に応じて、その別の加盟国の領域で行われた適合性評価手続の結果を
  受け入れない理由を説明する。

6 各加盟国は、その領域の適合性評価機関に劣らない条件で、別の加盟国の領域の適合性評価機関を
  認定、承認、認可の授与、さもなければ容認する。もし、加盟国が、自国の領域の特定の技術規則又
  は規格との適合性を評価する団体を認定、承認、認可の授与、さもなければ容認し、別の加盟国の領
  域の技術規則又は規格との適合性を評価する団体を認定、承認、認可の授与、さもなければ容認する
  ことを拒否するならば、その加盟国は、要求に応じて、拒否の理由を説明する。

7 加盟国が、他のいずれかの加盟国の領域の団体が行う適合性評価手続結果の、その領域での認証の
  促進に関する交渉の開始を求める別の加盟国からの要求を断る場合、その加盟国は、要求に応じて、
  その理由を説明する。



■第10条 透明性

1 人に有意義な意見を与える機会を広げるために、TBT協定第2章9条又は第5章6条に基づき案内を
  公示する加盟国は、

 (a) 加盟国が提案する取組みの論拠及び提案の目的を説明する記述を案内に含める。

 (b) TBT協定に従いWTOメンバーに提案を通知する一方で、TBT協定の第10条に基づき設置する
    問い合わせ窓口を通じて、電子的にその他の加盟国に提案を伝達する。

2 各加盟国は、人及び他の加盟国に、提案について文面で意見を述べるため、1(b)に基づく伝達
  から最低60日間を与える。

3 加盟国が、TBT協定の第2章第10条又は第5章第7条に基づき通知を行う場合、一方でその他の
  加盟国にも、電子的に、1(b)に言及する問い合わせ窓口を通して、通知を伝達する。



■第11条 技術協力及び貿易の技術的障害に関する小委員会

1 加盟国団は、これにより、加盟国の連絡窓口の職員から成る、貿易の技術的障害に関する小委員会
  (以下、小委員会)を設置する。

2 加盟国団は、連絡窓口となる政府組織の名称並びに、電話、FAX、Eメール及び他の関連する詳細を
  含む、その組織の所部の職員の連絡詳細を互いに提供する。加盟国団は、連絡窓口の変更、又は所
  部の職員の詳細の変更を、直ちに互いに通知する。

3 小委員会は、この章の運用の監視及び履行、並びに、特に以下の事項に責任を持つ。

 (a) 協力強化のための優先部門の特定。

 (b) 優先分野における事業計画の確立。

 (c) 加盟国の領域の関係人及び関係組織との事業計画への参加の調整。

 (d) 事業計画の監視。

 (e) 技術規則及び適合性評価手続の策定、採択、適用、又は実施に関連して加盟国が提起できる
     問題への対処。

 (f) 技術規則及び適合性評価手続の改善と発展における協力の強化。

 (g) 必要に応じた、加盟国領域の適合性評価機関や政府・非政府認定機関の間の部門別協力の
     円滑化。

 (h) 標準化、技術規則並びに適合性評価手続に関係する活動に携わる非政府・地域・多国間フォーラ
     ムの進展に関する情報交換。

 (i) 加盟国がTBT協定の履行と加盟国間の産品の貿易の円滑化を支援すると見なすその他の措置を
    講じること。

 (j) TBT協定に基づく進展を考慮に入れた本章の見直し、並びにそれらの進展を考慮に入れた本章の
    改訂に関する勧告の策定。そして、

 (k) 適切と考える通りの、この章の履行に関する委員会への報告

4 要求に応じて、加盟国は、本章に基づく更なる技術協力のために別の加盟国が行う、分野特有の提案
  に、好意的な配慮を払う。

5 委員会は、電話会談、テレビ会議もしくは加盟国団が相互に決定するその他の手段を通して、最低
  年一回、あるいは加盟国団の一国の要請によってはより頻繁に、本章の管理及び実行を促進し監視
  する会議を行う。

6 加盟国が、本章の付属書で取り扱う産品が健康、安全又は環境にもたらす可能性があると見なす緊急
  の危険に対応するための措置を講じる場合、実施協定に規定する制限期間に、その他の加盟国にその
  措置並びにその導入の理由について通知する。



■第12条 技術協議

1 加盟国は、この章に基づき起こる問題を解決するために、各自の連絡窓口を通じて、別の加盟国と
  技術協議を開始する。

2 加盟国団が別の方法で相互に決定しない限り、加盟国団は、Eメール、電話会談、テレビ会議もしくは
  加盟国団が相互に決定するその他の手段を通した技術協議の要請から、妥当な期間技術協議を開
  催する。加盟国団は、折に触れ、妥当と見なす期間を文面に明記する。

3 加盟国は、もしそれが必要と見なすならば、委員会に、当該技術協議を円滑にするよう要求できる。

4 当該技術協議は、第15章(紛争解決)に基づく加盟国の義務と権利を侵害するものではない。



■第13条 付属書及び実施協定

1 加盟国団は、第17章(管理上・制度上の規定)に従い、加盟国間の貿易に適用される適合性評価及び
  技術規則に関係する手続と合意原則に示すこの章に対する付属書を締結できる。

2 加盟国団は、第8章11条に従い、1に言及する付属書の実施の詳細を示す実施協定、もしくは、第8章
  11条に基づき確立する事業計画に関連して結ぶ取り決めを発展させることができる。

3 加盟国団は、特に二国以上の加盟国間の貿易に適用される適合性評価及び技術規則に関する既存の
  取り決めを付属書並びに実施協定に組み込むよう努める。



posted by FumiHawk at 09:49| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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