2011年03月10日

反対派がTPPと米国の思惑を切り分けて考えなければならない「たった一つの絶対的な理由」

えらく刺激的なタイトルで、賛否両論の集中砲火を浴びそうですが・・・
このエントリーのカテゴリを「情報戦略・戦術」に分けてあるのをご覧頂ければお判りいただけるかと思いますが、いつもの視点と違い今回のエントリーはTPPの経済的側面等ではなく「如何にTPP反対の世論を動かすか」という視点から書いています。
言い替えれば「TPP賛否という喧嘩の仕方」と言ってもいいでしょう。
なにせ内閣肝いりで総理が世界に向けて「やる」と言ってしまっているので、国民の大多数が反対しなければこの状況は覆せない可能性があります。
このブログをご覧になる方々は、問題意識も高く「自分で情報を収集し、その上で賛否を判断しようとする人達」でしょう。
ですが、大半の人は「TPPの中身ではなく議論している人達の言動だけを見て判断する人達」です。
それが悪いとは言いません、というかそれが普通だとおもいます。
ということは、反対派の論陣の張り方次第で上記の一般層を取り込めるかどうかが変わってきます。
この点に関しては、議論自体は正しくても、ほんの些細な事でひっくり返されてしまう事もあります。


◆本題に入る前提条件

既にご存じかとは思いますが、まず最初にTPPに関してこのブログの立ち位置を。
  1. TPP加盟に関しては米国の思惑や動向に関係なく反対です
  2. 農業の合理化、大規模化に関する論議は否定しませんが、それはTPP加盟による農業壊滅を回避してからの問題でしょう
  3. 地方公共事業依存改善に関する是非以前に、TPP加盟により公共事業による地方景気対策の効果がなくなる点は看過できません
  4. 是非の判断基準は「国益」=「日本国民の利益」で、日本企業の利益ではありません
  5. 「米国の思惑」が有る事は事実で、国益にとってその事は脅威と考えています<ココ重要

◆米国の思惑を是非の根幹理由にしてはいけない「たった一つの絶対的な理由」

それは次の一文に尽きます。

『米国の思惑を理由にしたTPP反対は推進派に逆利用される危険がある』

言い替えれば、米国脅威論によるTPP加盟反対論は賛成派にとっても「米国にとっても」非常に与しやすいのです。

例えば、反対派がTPP加盟すると米国の食い物にされるという理由で一致団結し、世論にTPP=米国の構図を浸透させて反対派を増やしていった場合、米国としては自分たちが加盟しなければ日本はTPPに加盟するだろうと考えるでしょう。
日本の入らないTPPに米国が加盟しても得るものはあまり無く、失うものが大きいので、日本が加盟しなければ意味がありません。
その日本が「米国の食い物に・・・」という論調で反対に傾いたのであれば、自分たちが一旦加盟交渉から撤退し、米国抜きのTPPに日本を加盟させた上、後から米国が加盟するだけで自分たちの目的は達成されます。
当然、米国には後から入っても内部で主導権を握れる力がありますし、その段になって日本が脱退する事が不可能なのはお見通しでしょう。
米国が既に加盟済みならこの手は使えませんが、米国は現在『TPPに加盟すらしていない』つまり部外者ですので十分に可能です。
オバマ大統領は「5年で輸出を2倍にする」と言っていますが、加盟が2〜3年ほど遅れても、日本がTPPに加盟すれば関税撤廃とドル安誘導で充分達成可能でしょう。
米国が脅威と言うのであれは、あの国がこの程度の腹芸すら出来ないと考えるのは間違ってると思いますし、事実これまで米国はもっとしたたかな手段を用いてきている事は、これまでの歴史を見れば明らかです。

TPP賛成派にとっても同様の論調で世論形成が可能です。
経済界も労働組合もTVも賛成に傾いているわけですから、米国脅威論が盛り上がってきたときに世間に対して「米国が問題?なら米国抜きならTPP加盟は問題ないでしょ」と情報にスピンをかければ良いだけです。
それまで「米国に食い物にされるからTPP加盟反対」との論調に心を動かされつつあった人達が「米国抜きならいいんじゃないかな」となるのは非常に簡単ですし、この手のスピンは情報戦における初歩の初歩です。

結果として、TPPの有る無しにかかわらず存在する米国の思惑をTPP反対の根幹に据えたことが、国益を損ない、負け戦につながる事態があり得るのです。

米国の思惑は当然ありますし、それ自体についての懸念は強く同意出来ます。
しかし、この論調は推進派にとって有利な論陣を張る材料になりかねません。
どの国にとっても国益の追及は政府の最も基本的な姿勢です。
他国を犠牲にしても自国を繁栄させたい、自国民の生活を守る為なら他国を食い物にする事も厭わないと言う姿勢は、国際社会において何ら珍しくないものです。
当然米国も自国民及び自国企業の為に外交を行います。それが日本の国益にバッティングすること自体は何ら不思議はありません。
『TPPが日本を壊す』(扶桑社新書)で言及していますが、米国はMBS問題等複数の経済的爆弾を抱えています。
米国はこの「爆弾」による大ダメージを回避する為、また爆発してしまった際に速やかに回復する為に、外需主導の景気回復を狙います。
そして米国が売りたい商品を購入出来る国の筆頭かつ事実上唯一の国が日本です。
当然TPPに限らず米国は日本へ市場開放を要求します。
つまり、米国にとっては日本市場へのアクセス方法が「TPPであろうがFTAであろうが構わない」のです。

「米国の思惑=米国の国益」ですから、これはTPPうんぬんと関係なく“常に存在”します。
TPPによる国益追求が不調ならすぐに別の手段を考えるでしょう。
実際、このブログをご覧の方々でしたら「年次改革要望書」にまつわる顛末等でそれは充分ご存じかと思います。
政府の使命の一つである国益追求が出来ていない日本と違い、諸外国は日本に比べて遥かにしたたかです。
その中でも米国は最もしたたかな国の一つでしょう。
日本の感覚で見ていると国際交渉の場では足下を掬われかねません。
それは政府だけでなく、世論も同様と考えます。

仮に米国が参加しないTPPに加盟したとしても、日本は他の国から奪われる立場にある事はかわりありません。
既に発効しているTPPにおいて、加盟国であるNZの国内が揉めています。
これは新興国有利で先進国不利なTPPにおいて「金持ち国NZ」の国民が他の加盟国に搾取されている事気付いたからです。
日本がTPPに加盟したらNZに替わって搾取される立場に立つのは火を見るよりも明らかです。
新興国は農産物や軽工業品を中心に日本に対して輸出攻勢をかけてくるでしょう。
逆に、相手国の経済規模故に日本側から売れる商品の量は限られています。
さらに円高による日本製品価格の上昇はTPPで廃止される関税より大きいと想定されます。
つまりTPPは『米国の動向に関係なく日本にとってはマイナスにしかならない』のです。
広い賛同を得る為にはこの点を押さえる必要があります。

要は『日本さんが飛び込もうとしている池(TPP)の中にワニ(米国)がいるか、ピラニアの群れ(新興国群)がいるかの違いなだけ』なのです。
ワニとピラニアの群れがいる池に飛び込むのは問答無用で危険ですが、ワニがいなくてもピラニアの群れがいる時点で飛び込むなんて無謀きわまりないといえます。
この構図こそが反対派として多くの一般層に浸透させねばならない点と言えるでしょう。

米国の思惑はあります、しかしそれ以上に「TPP加盟自体が日本にとって大きなマイナスなんだ」と言う事を多くの人に広げて頂ければと思う次第です。



posted by FumiHawk at 11:12| Comment(1) | TrackBack(0) | 情報戦略・戦術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
その視点、大事ですね。日本人は喧嘩の仕方を知らない。大仰に拳を振り上げるのなら、下ろすタイミングまで考えてからでなければなりません。かなり周到な想定問答集が必要ですね。敵は百戦錬磨のプロ、こちらはアマの上に経験が少ないと来た。割が合わないところまでやれて初めてプロに勝ちます。
Posted by クマのプータロー at 2011年03月12日 17:47
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