2011年03月17日

デマとノイズの津波は被災者を苦しめる 〜緊急時情報発信の大原則〜

3月11日に発生した東日本大震災、史上最大の規模の揺れ、津波、そしてその後に続く原発事故など、正に未曾有の激甚災害です。

情報収集を行えば行うほど、現状のレベルで被害がとどまっている事が奇跡に近いと感じます。

世界が賞賛する様な「災害発生時としては考えられない様な冷静で忍耐強い対応」も特徴です。
もちろん、窃盗といったトラブルがないわけではありませんが、「暴動」は発生していません。
この点については日本の文化的成熟度と国民のモラルの高さが大きな要因ですが、同時にインターネットなど「情報伝達手段の多様化」もこれに一役買っていると思います。

非常時、人は「なにが起こっているのか」「どうすればいいのか」といった生存に必要な情報を欲します。
こういった情報がないと、わずかな伝聞情報や流言飛語にすがって過った対応を起こす事もあります。
また、大きな精神的ダメージを受けている状態では、現状を堪え忍んで生き抜く為の支えとして「孤独からの救済」のための情報、励まし、共感、支援のメッセージも非常に重要になります。

そして、これら必要な情報を被災者に届けようとした時、最大の障害は「デマ」や「ノイズ情報」なのです。
デマは疑心暗鬼や誤った対応の温床となり、ノイズ情報は正しい情報を埋もれさせて情報伝達の大きな障害となります。
情報による2次被害を少しでも減らせればと思い『緊急時情報発信の大原則』をまとめました。
良かれと思って行った事が、逆に被災者を苦しめる・・・これほど悲しい事はありません。
そんな悲劇を防ぐ為にも、是非ご一読頂ければ幸いです。



【被災地以外の人の大原則】

(1)電話、携帯メールは被災地の人の為に使用を控え、ネットを活用する

インターネットは最初通信が分断されても情報共有が可能であるようにとの軍事目的で開発されました。
ですので、原理的に災害状態に強い通信手段です。
データ通信は通信量に比べて多くの情報を伝達できるのも特徴です。
携帯メールはインターネットを経由しますが、その前段階で携帯電話各社のサーバで処理される為、携帯メールを大量に使うと送信不能や配達遅延が起こります(正月の年賀メールと同じです)。
また被災地では携帯の電池は貴重で、被災者に携帯メールが大量に殺到すると「携帯メール受信で貴重な電池を消耗」してしまいます。
携帯メールでの安否確認電話も現時点では『ノイズ情報』になってしまいます。
携帯電話だけでなく携帯メールも使用を控え、G-mailやSNSのメッセージといった別の手段を被災地との通信手段として下さい。


(2)Twitter、SNSの日記、Blogは『メディアと同じ情報発信である』事を自覚する

Twitterでの、SNSの日記、Blogなどは非常に個人的な発言の様に感じてしまいがちですが、クローズドでの発信以外は全て「メディアと同じ情報発信」です。
そして手書き文字でなく活字(というかフォントですが)になっていると、受け手はマスメディア情報と似た様な感覚で受け取ります。
特にTwitterでのRT(リツイート)は非常に簡単で拡散力が強いのですが、これも「メディアと同じ情報発信」なのです。
「自分の私的な発言なんだから」という感覚でリツイートしたことが、多くの人の目に止まる事など日常茶飯事です。
またTwitterはSNSの日記やBlogなどの「プルメディア」と違い、TVやラジオに近い「擬似的なプッシュメディア」といえます。これは「その情報を見たくない人のタイムラインにも自分の発言が表示される」可能性がある事を意味します。
公開発言は全てメディアと同じ「情報発信である」との自覚をお願いします。


(3)伝聞情報、ニュースは『極力一次ソースに当たって確認してから拡散する』

先日、「“確認してから言え”とかいうバカが多いが、読みたくなければ読むな。」「災害のときは、不確かな速報も必要なんだよ。」と仰った著名人の方(*1)がおられましたが、これはあまりにも無知な話ですし、状況を把握していません。

たしかに「被災地にとっては」不確かな情報が必要な場合があるでしょう。
けれども「被災地以外の人」は一呼吸置ける環境があります。
そして「情報の確認を取る事は “被災地以外の人” にしかできない」のです。
被災地の人に確認を取れなんて無茶もいいところ、こういう作業は通信環境が整い生存の危機にさらされていない状況の人にしかできない事なのです。
ボランティアというなら、「被災地に正確な情報を届ける為の確認作業」こそが今すぐに可能なボランティアです。
ちょっとググる、すこし確認をするだけでデマやノイズ情報の拡散を大きく減らす事が可能です。
もちろん「チェーンメール」も同様で、伝聞情報は必ず一次ソースで確認を取るべきです。
チェーンメールはデマの拡散だけでなく、被災者の貴重な携帯電話の電池を消耗するのでさらに悪質です。
これらの行為は善意から行われている事が多いでしょうが、大災害後の緊急時である今は善意だからと言って許容出来る状況にありません。
確認作業が出来る環境の人が確認努力を放棄し、ただ速報性だけを求めて不確かな情報を拡散する行為は“被災者へさらなる苦痛を強いる行為”であると言えます。


(4)情報は「修正、削除可能な方法で」発信する

確認をとった時点では正しいと思った情報も、その後の状況によって間違った情報になってしまう事があります。
ですので、極力修正や削除できる方法での情報発信が重要です。
SNSの日記やBlogは修正や追記で対応できると思います。
Twitterでリツイートする場合は、出来る限り「公式RT」を利用して下さい。
発信元が発言を削除すれば関連の公式RTも同時に削除されるので、ノイズ情報の蔓延をかなり防げます。


(5)情報を集積するようにつとめる

情報の拡散は重要ですが、同時に集積しなければ被災者が情報収集するのに非常に困ります。
現在、安否情報やインフラ状況などを集積したサイト(*2)(*3)が複数立ち上がっています。
自前での情報発信だけでなく、Twitterなどで発信された安否確認依頼や避難所情報などはこういったサイトに集積して被災者の利便性を向上させる事も必要です。



【被災地の人の大原則】

(1)被災地内同士の連絡にも災害ダイヤル等を活用する

電話が繋がらない状況でたびたび電話発信すると電池を大きく消耗します。
また、圏外表示の場合は電源を切っておかないと携帯が自動的に電波を探しに行ってしまう為、待ち受け時間が短くなってしまいます。
特に被災地内同士の通話はインフラの復旧が前提になりますので、無理に通話しようとせず、極力災害ダイヤル等を利用する事が効果的です。


(2)安否情報は情報の集積サイトで確認を

既に安否情報の確認サイトには大量の情報が集まっています。(*3)
Twitterで「安否情報を下さい」とツイートするより、PCが使える地域へ「○○さんの安否情報を情報サイトで調べて下さい」と検索を依頼するのが最も早く安否確認出来ます。
それで見つけられなかったら、改めて安否情報を求めると良いでしょう。


(3)救援物資等の状況には県名、地名を出来るだけ詳しく入れる

類似地名等もあり、また被災地以外の人は土地勘がない為、ある程度場所を詳しく書いて頂く事が情報の有効活用につながります。


(4)どんな情報でもいい、発信できる人は現地の情報を発信して下さい

TV等のマスメディア情報は最も困難に直面している被災地には入り込めません。
ツイートでもBlogでも写メでもいい、それこそ不確かな情報でも構いません。
出来るだけ多くの情報を発信して頂ければと思います。



最後に。
この度の災害でお亡くなりにたった方のご冥福をお祈りすると共に、行方不明の方の無事を祈っております。

そして・・・この災害で生き残って下さった方々、本当にありがとうございます。
あなた方がが生きていてくれる事、そのこと自体が何事にも変えがたいほど嬉しく思います。
生き残ってくれて、生きていてくれて本当にありがとう。




(*1)『池田信夫氏の原発関連ツイートへの批判/擁護に見る「情報の速報性と正確性」について』
   http://togetter.com/li/110792

(*2)【災害関連リンク集】政府、地方自治体関連(CNET Japan)
   http://japan.cnet.com/sp/eq2011/35000482/

   【災害関連リンク集】インフラ、ライフライン関連(CNET Japan)
   http://japan.cnet.com/sp/eq2011/35000481/

   【災害関連リンク集】義援金、支援(CNET Japan)
   http://japan.cnet.com/sp/eq2011/35000487/

(*3)【災害関連リンク集】安否確認(CNET Japan)
   http://japan.cnet.com/sp/eq2011/35000489/
posted by FumiHawk at 10:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 情報リテラシー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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