2012年12月13日

最高裁裁判官国民審査 -衆議院総選挙と同じ位大切な選択-

12/16、選挙と同時に『最高裁裁判官国民審査』が行われます。
これは、最高裁の裁判官に不適切な人が就任している場合に、その状況を改善する為に行われます。
最高裁の裁判官は、任命後初の衆議院議員総選挙の投票日に国民審査を受けます。

審査の方法は、衆院選の投票時に審査用の投票用紙を渡されます。
この投票用紙には裁判官の氏名が記されており、「最高裁の裁判官として不適切だな」と思う裁判官の氏名の上に×印を書き入れます。
×印が投票の過半数を越えると、その裁判官は罷免されます。

これは憲法にも記されている国民の権利であると同時に、我々の社会を構成する重要な問題でもあるのですが・・・ほとんど関心を向けられていません。
最高裁判所の判例は事実上の法律と同じような扱いを受けますので、最高裁でおかしな判決が出ると以後の社会に多大な影響が発生します。
政治家と同様に、最高裁判事も日常生活に直接的間接的な影響を与える存在です。
にもかかわらず話題にもほとんど取り上げられず、しかもこれまで「国民審査で罷免された裁判官は一人もいない」というのはある意味異常だと言えます。

この辺りの話を昨日ニコ生で話したのですが、その時に出した「裁判官の傾向をまとめた表」を欲しいと言うコメントが多かったので、下記に掲載します。

om000001.jpg
(クリックすると画像が大きくなります)

表は大体観て分かるとおりです。

「国歌起立職務命令」は君が代を歌ってる時に立たなかった“公立学校の教師”を処分することについてです。

一票の格差の「違憲」と「違憲状態」は、それぞれ「違憲だから即刻解消しろ」なのか「違憲だけど解消するかどうかは政治次第」という違い。

「猥褻画像へのURLリンク」は、猥褻画像そのものではなく画像へのリンク(文字列)を貼る事自体が処罰の対象となるかどうかです。この件は児童ポルノ絡みの案件なので、特に「思想>技術」となっている可能性があります。

「まねきTV」は、まねきTV裁判での判決です。この事件はソニーが販売していたネットを回して遠隔地でテレビを視聴できるようにするための製品“ロケーションフリー(ロケフリ)”を使い「1対1の遠隔視聴」をサービスとして提供するビジネスに対する判断です。ロケフリは2006年2月3日「経済産業省第1回ネットKADEN大賞」を受賞しており、商品として問題無いとされていたものを利用して行われた事業が差し止めとなりました。
この問題では、地裁、知財高裁では棄却されていたにもかかわらず最高裁判断で逆転している点が注目です。

手続き等の違反案件については、同様の問題の案件においてルール重視か状況を重視かで分けてあります。

死刑観は、死刑に忌避的かどうかを纏めたものです。×は忌避的、△は若干、○は事件の内容次第では死刑も辞さずという感じです。

その他の項では各裁判官が取り扱った特徴的な事件などを挙げています。


「猥褻画像へのURLリンク」「まねきTV」「ウィニー作者幇助事件」などに共通するのは、今後増えるであろうハイテクや新技術に対する理解が裁判官によって大きく異なるという事です。

また「沖縄ノート名誉毀損訴訟(大江健三郎の例のアレ)」などは、思想的な側面も大きく絡んでくる可能性があります。


最高裁判事の情報はあまり多くない為、国民審査公報だけでは足りずに収集分別して表を作るのに苦労します。
本来このようなことはメディア、特にNHKが訳の分からん外国ドラマとか流す暇があるのなら率先してやるべきではないかとおもうのですが・・・

いずれにせよ、最高裁裁判官国民審査は重要です。
この記事が大事な判断の一助になれば幸いです。

【追記】 - 国民審査は棄権できる -

誰を信任したらいいか分からない、でも全員×にするのもちょっと・・・
そんな場合には『国民審査を棄権する』という方法があります。
衆院選での白票投票と異なり、信任投票ですので、棄権は立派な意思表示の一つです。

棄権方法は
 投票用紙を受け取る前に「国民審査は棄権します」と宣言するだけ


投票用紙を受け取ってしまった場合は、棄権する旨申し出て投票用紙を返却刷ればOKです。



【関連情報】

(↓昨日の私のツイートを纏めたものです)
「最高裁判所裁判官国民審査の『重要性』と、誰も教えてくれない『棄権の方法』 #seiji」

posted by FumiHawk at 10:16| Comment(13) | TrackBack(0) | 政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年09月27日

自民党「安倍新総裁」誕生に見る風向きの変化と再生の芽


昨日、自民党総裁選挙がおこなわれ、決選投票の結果「安倍晋三総裁」が誕生しました。
第1回投票は一位の石破茂氏が199票(議員票34票/党員票165票)、ニ位の安倍晋三候補141票(議員票54票/党員票87票)でしたがどちらも過半数を確保することができず、議員のみによって行われる決選投票に移行。
決選投票では安倍晋三が108票、石破茂氏が89票と、19票差で安倍晋三新総裁選出ということになりました。
第一回投票では党員票でダブルスコア近い差をつけられた安倍氏ですが、石橋との議員票差をほぼ守り切った逆転勝利でした。

この展開は非常に予測しづらい・・・というか、これほどまでに石原伸晃氏(議員票58票/党員票38票)が弱いとは思いませんでした。
まあ、例の失言がかなり尾を引いたことと、背後に父親の石原慎太郎の影を見て尖閣の問題に強い姿勢を望んだ人たちの期待を裏切ったことが大きな痛手だったことは想像に難くありません。

今秋は自民党総裁選、民主党代表選が行われましたが、この中で経済重視の姿勢と公約を明確に打ち出した数少ない候補である安倍氏が新総裁になったことは、世界経済が極めて悪化しつつある現状を鑑みると、日本にとって再生の可能性の芽となるかもしれません。

安倍氏は近年経済に対してかなり意識をしており、積極的に情報を求める姿勢が窺えました。
以前、経済に関する情勢と日本のも抱える問題点についてご説明させていただいた折には、日本の抱える問題はデフレと若年者雇用と所得の減少であり、この状況を打破するためにはデフレ脱却と経済成長の促進が重要である旨お話ししたところ、強い関心を示されておりました。
今回の「6つの全力」の筆頭にデフレ脱却と成長戦略重視の姿勢を打ち出したのも理解できます。
これまでは「プライマリーバランスが」とか「財政均衡を崩さずにデフレ脱却と景気回復」とか「国債の暴落を食い止めるために云々」といった過程と目標を逆転させたような話ばかり聞こえてきた政治の世界からの情報に比べ、ほんの少しですが風向きが変わりつつあるような感を受けます。
まだ細部の煮詰めが十分でない点は否めませんが、今後目標と過程を取り違えず、「これまでと違った手法」を「非難を恐れず大胆に」実行できれば日本経済復活の可能性も出てくるでしょうし、十分な経済成長政策とそれに伴う戦略的投資が実行できれば、世界経済への波及効果も大きなものとなるでしょう。

ただ、新総裁への選出は喜ばしいものの、日本再生を考えるとまだスタートラインにつく前の段階です。
安倍新総裁は党員票で石破氏にダブルスコアに近い差をつけられていて、その石破氏は党員票の過半数を超える票を獲得しています。
党員票はある意味、各地方組織の意向を強く反映しているといえ、それはとりもなおさず「次の選挙は石破氏で戦いたい」という地方の意向ともいえます。
この意思表示を議員による決選投票でひっくり返したのですから、新総裁の最初の重要な仕事は「地方の説得」であると言えるでしょう。
それから、立候補〜決選投票までの過程を考えると、党内融和にも細心の注意を払わねばなりません。
こういった点は一朝一夕に解決しない問題ですので、新執行部にとってかなりの重荷になると思われます。

また、安倍総裁は前回の総理大臣辞任の経緯等もあり、マスコミからみれば極めて叩きやすい格好の標的といえます。
残念ながら、この点において自民党には十分な対マスコミ戦略能力を有しておらず、バッシングの嵐が巻き起こる可能性があります。
この嵐から総裁を守ることができ、かつマスコミを味方に引き込むことが出来るかが今後の自民党にとっての大きな課題と言えるでしょう。
こういった意味では、安倍新総裁という選択は「日本にとっては福音となる可能性を秘め」ていても、自民党にとっては「茨の道」になるかもしれません。

しかし、現状の国会の顔ぶれを考えると、今回の新総裁誕生は良い結果だったと言えるでしょう。


安倍さん、総裁就任おめでとうございます。
これからのご活躍に期待しております。

posted by FumiHawk at 03:36| Comment(1) | TrackBack(0) | 政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年09月13日

安倍元総理の総裁選公約と現在の日本に必要なもの

12日、安倍元総理が総裁選出馬を表明しました。
それに従い、以下の6項目(ロイターより)を公約として発表しました。

1)1日も早いデフレ脱却と成長力の底上げによる所得向上・雇用創出
2)憲法改正・教育再生
3)日米同盟の強化など外交・安全保障の確立
4)道州制を前提とする地方分権の推進など強固な国づくり
5)消費税に軽減税率を導入するなど社会保障制度の確立
6)経済連携協定(EPA)や自由貿易協定(FTA)の推進などによる地域づくり

自民党の総理経験者が戦後の慣例を破っての出馬表明ですので、この6項目は自民党でのある程度のコンセンサスが得られる内容と考えていいでしょう。

現在、日本の抱えている問題は大きく分けて「国防(領土問題含む)」「デフレ」「景気低迷」の3つです。
デフレと景気低迷は同一に見えますが、これは本質的に異なるものですので、それぞれの解決が必要です。

安倍元総理の公約の1番目はデフレ脱却と成長力の底上げによる所得向上・雇用創出を唄い、会見でも「消費税増税前のデフレ脱却、経済を力強い成長軌道に乗せていく必要性」を訴えています。
この根本姿勢はこれまでの国政にくらべて経済環境改善への強い意志が見られると言えます。実際の方針として、デフレ脱却に対しては、政府と日銀が協調して大胆な金融緩和などデフレ脱却のため政策を総動員し、2─3%の緩やかで安定的なインフレを達成する必要を示し、経済成長戦略に関しては、自民党が政権を奪取した際には「日本経済再生本部」を創設、新たな成長戦略を策定するとしています。

デフレ脱却と景気低迷の改善を別々に捉えている点は現状をきちんと理解していると言えます。
日銀との協調による金融緩和を訴えているものの、現状それが出来ない原因である日銀法の改正への言及がない点は少々勿体無い気がします。
経済成長に関しては、方向性はあるがフリーハンドで考えようという内容です。記者会見で「成長の鍵はイノベーション。新しい技術、ビジネスアイデア、創造的な取り組み。イノベーションに国家資源を戦略的に投入する」と具体案を避けた表明をしていますが、これは総裁選立候補までの準備期間が短かった事が原因でしょう。以前、安倍元総理に経済についてご説明させて頂いた折に「所得の向上と雇用創出が最大のテーマ」とお話しさせて頂いたので、この点について項目の筆頭に記載された事はありがたい限りです。またその際に、現状では経済を最優先すべきと強く申し上げてきましたので、経済についての項目がトップに来ていることは喜ばしいことです

2番目については安倍元総理の持論であり、教育の再生は行われなければならない問題ですので大いに期待するところです。

3番目の安全保障についても同様で、尖閣諸島や竹島といった問題が大きく注目される中、民主党政権で悪化した日米関係を改善する事も含めて、安倍元総理の経験に期待が持てます。

4番目の道州制についてですが、この点に関しては「何の為の道州制か」が明示されなければ「強固な国作り」と相反してしまいます。行政効率化を目的とした行政区分の変更としての道州制ならば理解できますが、中国の動向等を考えると地方主権といった現在多く見られる道州制論では逆に国を弱くしてしまいます。この点は維新の会との連携をある程度念頭に置いての言及でしょうが、正直不安が残る部分です。

5番目の社会保障制度の確立については、消費税の軽減税率と社会保障制度の確立はある意味「全く関係ない」ので、社会保障制度改革に手を付けるぞという表明程度と理解すべきでしょう。更にいえば民自公の三党合意支持の姿勢ですので、それを明確にした項目であるとも言えます。三党合意に是非はともかく、民主党はその合意で党内を纏めきれず分裂しているのですから事実上合意を堅持する必要性があるのか正直疑問ではありますが。

6番目のEPAやFTAですが、これらは国益を鑑みて必要に応じて交渉、締結を行うものであり、決して「地域作り」のツールではありません。TPPもそうですが、仮にこれらを地域作りのツールと考えるのであれば、その思想は過去の「地域ブロック化」へ繋がるものに他なりません。地域作りとしてEPAやFTAを利用しようとすると、国益を地域作りの観点から犠牲にしかねない場合や、地域としての纏まりを優先し、地域外諸国の排除に繋がる危険性を孕んでしまいます。これら経済協定に対する理解に関しては正直不安です…が、この点の認識は永田町ではそれほど差がないのが残念なところです。

総評としては、経済については問題意識をしっかり持っており、安全保障に対しては高い意識と経験を感じられるが、全体では突貫工事な印象です。
もう少し時間があればもっと練り込んだ内容になったと思います。
ただ、経済を筆頭に据えた公約が明確に打ち出された事は、日本の現状を考えると重要なことだと思います。
現在の日本に必要な「国防(領土問題含む)」「デフレ解消」「景気浮揚」の3つのうち2つは及第点、「景気浮揚」に関しては今後に期待といった感じでしょう。

いずれにしても、安倍元総理には大きな期待をしていますので、これからも微力ながら応援させて頂きたく存じます。
posted by FumiHawk at 03:48| Comment(4) | TrackBack(0) | 政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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