2011年02月26日

環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)私訳 『第9章 競争政策』

先日のエントリーに書いたとおり、TPPメインアグリーメントの私訳文を公開します。
今後の公開は必要に応じて行いますので順不同になると思います。
また、各章の分量も多いので、場合によっては章を分割して公開する場合も御座いますのでご了承下さい。

注)この訳文は当ブログ独自で行ったものです。
   著作権は放棄しませんが、非商用のみ自由引用とします。
   引用する場合、トラブル防止の為必ず出典を明記して下さい。






環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)『第9章 競争政策

■第1条 目的

1 加盟国団は、経済的効率及び消費者福祉を促進する開放的競争市場を創造し、維持することの戦略
  的重要性を認識する。

2 この目標に向かって、各加盟国は、投資及び貿易の障害を削減し排除するよう尽力する。その方法は
  以下の事項も含む。

  (a) 私的・公的両方のビジネス活動を含む、全形式の商業活動への競争法(制定法)の適用。並びに、

  (b) 生産地と目的地の間でも、経済主体間でも差別しない方法での競争法(制定法)の適用。

3 加盟国団は、反競争的事業活動は本協定によって生じる利益を妨げることが可能であると認識する。
  加盟国団は、反競争的事業活動によって減退している、又は相殺されている産品及びサービスの自
  由化プロセスの観点からは本協定の利益を回避するように、本協定と合致する方法で各自の競争
  法を適用することを約束する。



■第2条 競争法と執行

1 各加盟国は、経済的効率及び消費者福祉を促進するという目的を持って、反競争的事業活動を禁止
する競争法を採択又は維持する。

2 競争に関する歪み又は制限を阻止することを目的として、加盟国団は、市場における単独又は共同の
  支配的地位から起こる横暴な挙動、並びに、競争相手による反競争的協定、協調行為又は取り決め
  に特別の注意を払う。これらの慣行は、産品及びサービスに言及し、企業が、その企業の所有権に関
  わりなく実行できる。

3 競争法は全ての商業活動に適用される。しかしながら、各加盟国は、一般競争法の適用から特定の
  措置又は部門を免除できる。ただし、当該免除に透明性があり、公共政策又は公共の利益を理由に
  行われることが条件である。本協定の効力発生日の時点での加盟国の免除項目は、第9章付属書
  Aに示される。それらの免除には、加盟国間の貿易に悪影響を与える目的はない。もし加盟国が、
  別の加盟国との貿易に影響を与える可能性があると見なす免除項目のリストへの追加を検討してい
  るならば、その加盟国に通知するものとする。なお、その加盟国は第9章第5条に基づき協議を要請
  できる。委員会は、実施協定を通して免除項目のリストへの追加もしくは削除を実行する。

4 各加盟国は、反競争的事業活動を法律で禁止する措置の実施に責任を持つ競争当局を設置又は維持
  する。各加盟国の競争当局の施行方針は、手続の対象が、その加盟国の領域内で業務を続ける限り
  において、その国籍を理由に差別しない。

5 各加盟国は、競争法違反の制裁措置又は救済措置の発動に従う人には、家庭裁判所もしくは独立
  裁判所において、当該制裁又は救済の見直しを求める、証拠を提出する、並びに証言を聞いてもら
  う機会が与えられることを保証する。



■第3条 協力

1 加盟国団は、競争政策の策定に関する情報交換によって、競争政策の分野で協力し調整を行うことに
  合意する。加盟国団はまた、各自の管轄区域における効果的な競争法執行を促進するための、各自
  の競争当局間の協力と調整の重要性を認識する。それゆえ、加盟国団は、通知、協議及び情報交換
  を含む、競争法執行問題について協力する。

2 加盟国団は各自の競争当局を通して、本協定の効力発生日の後、協力の合意を求める。



■第4条 通知

1 各加盟国は、以下のような場合には、反競争的事業活動に関する執行活動についてその他の加盟国
  に通知する。

  (a) 執行活動が別の加盟国の重要な利益に重大な影響を与える傾向があると見なす。

  (b) (執行活動が)競争に対する、別の加盟国の領域に直接的で重大な影響を持つ傾向のある制限に
     関係する。又は。

  (c) (執行活動が)別の加盟国で主に行われている反競争的行為に関係する。

2 通知は手続の早期の段階で行われる。ただし、それが加盟国団の競争法に反しないこと、実行中の
  投資に影響を与えないことが条件である。



■第5条 協議及び情報交換

1 加盟国の要請に応じて、加盟国団は、本章の目的の範囲内で加盟国間の貿易又は投資の競争による
  利益に悪影響を与える問題について協議する。

2 本章の規定に従って行われる協議との関連で加盟国の間で交換される情報又は文書は、機密として
  保持される。如何なる加盟国も、国内の法的要件に従うため以外で、当該情報又は文書を提供した
  加盟国の文書による承諾なしに、人に当該情報又は文書を開示もしくは公開しない。当該情報又は
  文書の開示が、加盟国国内の法的要件に従うために必要な場合、その加盟国は、当該開示を行う前
  に、その他の加盟国に通知する。加盟国団は、機密と見なさない情報の一般公開に同意することが
  できる。



■第6条 公営企業及び、指定独占を含む特権又は独占権を委任された企業


1 この章の如何なる規定も、加盟国が、各国の法律に従って私的独占又は公的独占を指定あるいは
  維持することを妨げない。

2 公営企業及び特権又は独占権が与えられている企業に関して、加盟国団は、本協定の効力発生日後
  に、加盟国団の利益及び本協定に反する、加盟国間の産品又はサービスの貿易を歪める措置が採択
  又は維持されないこと、そして、当該規則の適用が当該企業に負う特定の業務の遂行を、法律上又は
  事実上、妨害しない限りにおいて、当該企業が競争の規則に従うことを保証する。



■第7条 紛争解決

1 この章の如何なる規定も、加盟国が、適用可能な競争法及び規制の執行において別の加盟国の競争
  当局が成す決定に異議を唱えることを許可しない。

2 如何なる加盟国も、この章に関連して、又はこの章より起こる問題のために、この協定に基づく紛争
  解決手続きには頼らない。



■付属書A

 本付属書は、本協定から生じる利益に影響を与えることができ、第9章第2条に従った全ての商取引に対する競争法適用の免除品を列挙する。本協定の他の章の範囲内である競争法適用の免除品は含まない。

・ニュージーランド
  ニュージーランド通商法の特定免除品

  「医薬品管理局による医薬品補助金(2000年のニュージーランド公衆衛生障害法の53項)」―その
  法令は、通商法の第U部(制限的商慣行)から医薬品の購入と助成に関わる特定の協定を免除する。

  「輸出取決め(44項(1)(g))」―ニュージーランドからの産品の輸出にのみ、又はニュージーランドの
  完全に外側でのサービスの提供にのみ関わる“輸出取決め”は、通商委員会への適正な通知を条件
  として、通商法(制限的商慣行に関する第U部)を免除される。

  「農業生産者委員会」―通商法(制限的商慣行に関する第U部)の制限的免除品は、「2004年の食肉
  委員会法」及び「1997年の養豚業委員会法」に含まれる。これらの免除品は、産業に役立つ活動
  (例:市場振興及び調査)に資金を出すことを目的とした委員会による徴収を設定する取決めに関わる。
  食肉委員会については、免除は輸出関税割当協定に関する委員会の実施にまで及ぶ。


・シンガポール
  1 認可され規制される企業による通常の手紙・葉書サービスの提供。

  2 水道浄水の提供。

  3 排水管理サービスの提供(排水の回収、処理及び処分を含む。)

  4 公共交通機関:

    a. 公共交通会議法(Cap. 259B)に基づき認可され規制される人による定期バス便サービスの
       提供。

    b. 高速輸送システム法(Cap. 263A)に基づき認可され規制される人による鉄道サービスの
       提供。

  5 シンガポール海洋港湾局法(Cap. 263A)に基づき認可され規制される人による貨物ターミナル
    業務。

  6 銀行(決済)規則(Cap. 19, RG 1)に基づき設置される自動決済機関(ACH)が請け負う品物の
    決済と交換、及びACHに関わる活動に関連するシンガポール決済協会(SCHA)の活動。

  7 競争に関わる成文法下に公布される成文法又は行動規約に基づき承認される合併吸収(M&As)、
    及び上記の活動/部門のいずれかに関わるM&As。


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環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)私訳 『第8章 貿易の技術的障害』

先日のエントリーに書いたとおり、TPPメインアグリーメントの私訳文を公開します。
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また、各章の分量も多いので、場合によっては章を分割して公開する場合も御座いますのでご了承下さい。

注)この訳文は当ブログ独自で行ったものです。
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環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)『第8章 貿易の技術的障害


■第1条 定義

1 この章において、

 「技術規則の同等性」とは、一国以上の加盟国が、別の加盟国の技術規則が自国の規則の正当な目的
 を達成することを認めることを意味する。

 「規制当局」とは、産品に適用される適合性評価手続及び技術規則の準備もしくは採択に責任を持つ局を
 意味する。

 「技術規則」には、規制当局が、性能基準型規制に関わる必須条件を満たすと認める規格も含まれる。

 「TBT協定」とは、WTO協定の一部である、「貿易の技術的障害に関する協定」を意味する。

2 TBT協定付属書Tにおける定義は、“必要な変更を加えて”この章に取り入れられその一部を成す。



■第2条 目的

 この章の目的は、TBT協定の実行の助成と、規格及び適合性に関するAPECの取組みの拡大を通して、貿易の増加と円滑にすることである。可能な限り、加盟国団は次の方法によって順守コストの削減を目指す。

(a) 加盟国団内の産品の貿易に対する不必要な技術的障害を排除する。

(b) 産品に適用される適合性評価、技術規則及び規格に責任を持つ加盟国の規制機関の間の連携を
   強化する。そして、

(c) 貿易の技術的障害の影響に取り組む枠組みを提供する。



■第3条 範囲

1 この章は、2及び3に規定されている場合を除き、加盟国間の産品の貿易に、直接的又は間接的に
  影響を与える可能性のある、全ての規格と技術規則、そして適合性評価手続に適用される。

2 この章は、第11章(政府調達)で取り扱う当該事業体の消費又は生産の要件のために、政府事業体が
  用意する技術仕様には適用されない。

3 この章は、第7章(衛生植物検疫措置)で取り扱う衛生植物検疫措置には適用されない。

4 この章の如何なる規定も、不達成が生み出す恐れのあるリスクを考慮に入れた正当な目的を達成する
  ために必要な、TBT協定に基づく権利と義務に従って、技術規則又は規格を採択あるいは維持するこ
  とを阻害しない。これは、人間の健康又は安全の保護、動植物の生命又は健康の保護、環境の保護、
  詐欺的行為の防止、国家安全保障要件を確実にするために必要な技術規則を含む。



■第4条 貿易の技術障壁に関する協定の支持

 加盟国団はTBT協定に基づく、互いの既存の義務と権利を支持する。



■第5条 原産地

1 この章は、その原産地に関わらず、加盟国間で売買される全ての産品に適用される。

2 1に関わらず、加盟国は、費用のかかる審査手順の導入を回避するために、そしてその技術規則が
  TBT協定に適合する限り、技術規則の適用を通して非加盟国の産品に特別の配慮を与えることが
  できる。これは、第8章第11条の2に定める連絡窓口を通じてその他の加盟国に通知される。



■第6条 貿易の円滑化

1 加盟国団は、互いの市場へのアクセスを容易にすることを目的として、基準、技術規則及び適合性
  評価手続の領域での共同作業を増強する。特に、加盟国団は、特定の問題又は部門に適した加盟
  国間の構想を明確にするよう努力する。当該構想は、相互承認を通した協力並びに、例えば技術規
  則及び規格の同等性又は調和、国際規格の調整、供給業者の適合宣言に対する信頼、適合性評
  価機関に資格を与える認定の利用等のような、規制問題に関する協力を含めることが出来る。

2 加盟国が明らかにする新たな取組みは、国際規格の利用、透明性、情報交換、順守コストの削減の
  促進に焦点を合わせる。



■第7条 国際規格

1 加盟国団は、関連国際規格が存在する、又はその完成が近づいている場合、技術規則及び関係適合
  性評価手続の下地として、国際規格又は国際規格の関連部分を利用する。ただし、当該国際規格や
  その関連部分が、正当な目的を達成するために不適当又は非効果的な場合を除く。

2 この点において、加盟国団は、2002年5月23日のG/TBT/1/Rev.8の第9章「貿易の技術的障害に
  関する協定 第2条、5条及び付属書3に関連する国際規格、指針及び勧告の策定のための原則に
  関する委員会決定」に示すWTOの貿易の技術的障害に関する委員会の決定を適用する。

3 加盟国団は、技術規則の基準となるであろう当該機関内で策定される国際規格が貿易を円滑化し、
  国際貿易に不必要な障害を作らないことを保証する国際標準化機関への参加を背景に、必要に
  応じて、互いに協力する。



■第8条 技術規則の同等性

1 各加盟国は、たとえ、その技術規則が自国のものと異なろうとも、別の加盟国の技術規則を同等のもの
  と認めることを前向きに検討する。ただし、その技術規則が、正当な目的の達成及び同水準の保護の
  実現において、自国の技術規則が生み出すのと同等の結果を出すことが条件である。

2 加盟国は、別の加盟国の要求に応じて、その加盟国の技術規則を同等と認めない理由を説明する。



■第9条 適合性評価手続


1 加盟国団は、以下の事項を含む、適合性評価手続の結果の受理を円滑にするための幅広い仕組みが
  存在することを認める

 (a) 供給業者の適合宣言への輸入側加盟国の信頼。

 (b) 別の加盟国の領域で行われた適合性評価の結果の加盟国一国による一方的承認。

 (c) 互いの領域の適合性評価機関の間の協力的な取り決め。

 (d) 別の加盟国の領域に位置する機関によって実施される適合性評価手続の相互承認。

 (e) 適合性評価機関に資格を与えるための認定手続。

 (f) 適合性評価機関の政府指定。そして、

 (g) 重複を避け費用対効果の高い、行政の効率性を高める解決策の考案。

2 加盟国団は、適合性評価結果の受理を円滑にする仕組みの範囲に関する情報交換を強化する。

3 加盟国団は、加盟国間で適用する適合性評価手続が、不適合が生み出す恐れがあるリスクを考慮に
  入れて、製品が適用される技術規則に沿うという信頼性を輸入側加盟国にもたらすために必要である
  以上の制限をしないことを保証することによる、貿易の円滑化を確実にするよう努める。

4 適合性評価手続の結果を受け入れる前に、そして互いの適合性評価結果の継続的信頼性に対する
  信用を強化するために、加盟国団は、必要に応じて、例えば関係する適合性評価機関の専門的能
  力のような問題について協議できる。

5 加盟国は、別の加盟国の要請に応じて、その別の加盟国の領域で行われた適合性評価手続の結果を
  受け入れない理由を説明する。

6 各加盟国は、その領域の適合性評価機関に劣らない条件で、別の加盟国の領域の適合性評価機関を
  認定、承認、認可の授与、さもなければ容認する。もし、加盟国が、自国の領域の特定の技術規則又
  は規格との適合性を評価する団体を認定、承認、認可の授与、さもなければ容認し、別の加盟国の領
  域の技術規則又は規格との適合性を評価する団体を認定、承認、認可の授与、さもなければ容認する
  ことを拒否するならば、その加盟国は、要求に応じて、拒否の理由を説明する。

7 加盟国が、他のいずれかの加盟国の領域の団体が行う適合性評価手続結果の、その領域での認証の
  促進に関する交渉の開始を求める別の加盟国からの要求を断る場合、その加盟国は、要求に応じて、
  その理由を説明する。



■第10条 透明性

1 人に有意義な意見を与える機会を広げるために、TBT協定第2章9条又は第5章6条に基づき案内を
  公示する加盟国は、

 (a) 加盟国が提案する取組みの論拠及び提案の目的を説明する記述を案内に含める。

 (b) TBT協定に従いWTOメンバーに提案を通知する一方で、TBT協定の第10条に基づき設置する
    問い合わせ窓口を通じて、電子的にその他の加盟国に提案を伝達する。

2 各加盟国は、人及び他の加盟国に、提案について文面で意見を述べるため、1(b)に基づく伝達
  から最低60日間を与える。

3 加盟国が、TBT協定の第2章第10条又は第5章第7条に基づき通知を行う場合、一方でその他の
  加盟国にも、電子的に、1(b)に言及する問い合わせ窓口を通して、通知を伝達する。



■第11条 技術協力及び貿易の技術的障害に関する小委員会

1 加盟国団は、これにより、加盟国の連絡窓口の職員から成る、貿易の技術的障害に関する小委員会
  (以下、小委員会)を設置する。

2 加盟国団は、連絡窓口となる政府組織の名称並びに、電話、FAX、Eメール及び他の関連する詳細を
  含む、その組織の所部の職員の連絡詳細を互いに提供する。加盟国団は、連絡窓口の変更、又は所
  部の職員の詳細の変更を、直ちに互いに通知する。

3 小委員会は、この章の運用の監視及び履行、並びに、特に以下の事項に責任を持つ。

 (a) 協力強化のための優先部門の特定。

 (b) 優先分野における事業計画の確立。

 (c) 加盟国の領域の関係人及び関係組織との事業計画への参加の調整。

 (d) 事業計画の監視。

 (e) 技術規則及び適合性評価手続の策定、採択、適用、又は実施に関連して加盟国が提起できる
     問題への対処。

 (f) 技術規則及び適合性評価手続の改善と発展における協力の強化。

 (g) 必要に応じた、加盟国領域の適合性評価機関や政府・非政府認定機関の間の部門別協力の
     円滑化。

 (h) 標準化、技術規則並びに適合性評価手続に関係する活動に携わる非政府・地域・多国間フォーラ
     ムの進展に関する情報交換。

 (i) 加盟国がTBT協定の履行と加盟国間の産品の貿易の円滑化を支援すると見なすその他の措置を
    講じること。

 (j) TBT協定に基づく進展を考慮に入れた本章の見直し、並びにそれらの進展を考慮に入れた本章の
    改訂に関する勧告の策定。そして、

 (k) 適切と考える通りの、この章の履行に関する委員会への報告

4 要求に応じて、加盟国は、本章に基づく更なる技術協力のために別の加盟国が行う、分野特有の提案
  に、好意的な配慮を払う。

5 委員会は、電話会談、テレビ会議もしくは加盟国団が相互に決定するその他の手段を通して、最低
  年一回、あるいは加盟国団の一国の要請によってはより頻繁に、本章の管理及び実行を促進し監視
  する会議を行う。

6 加盟国が、本章の付属書で取り扱う産品が健康、安全又は環境にもたらす可能性があると見なす緊急
  の危険に対応するための措置を講じる場合、実施協定に規定する制限期間に、その他の加盟国にその
  措置並びにその導入の理由について通知する。



■第12条 技術協議

1 加盟国は、この章に基づき起こる問題を解決するために、各自の連絡窓口を通じて、別の加盟国と
  技術協議を開始する。

2 加盟国団が別の方法で相互に決定しない限り、加盟国団は、Eメール、電話会談、テレビ会議もしくは
  加盟国団が相互に決定するその他の手段を通した技術協議の要請から、妥当な期間技術協議を開
  催する。加盟国団は、折に触れ、妥当と見なす期間を文面に明記する。

3 加盟国は、もしそれが必要と見なすならば、委員会に、当該技術協議を円滑にするよう要求できる。

4 当該技術協議は、第15章(紛争解決)に基づく加盟国の義務と権利を侵害するものではない。



■第13条 付属書及び実施協定

1 加盟国団は、第17章(管理上・制度上の規定)に従い、加盟国間の貿易に適用される適合性評価及び
  技術規則に関係する手続と合意原則に示すこの章に対する付属書を締結できる。

2 加盟国団は、第8章11条に従い、1に言及する付属書の実施の詳細を示す実施協定、もしくは、第8章
  11条に基づき確立する事業計画に関連して結ぶ取り決めを発展させることができる。

3 加盟国団は、特に二国以上の加盟国間の貿易に適用される適合性評価及び技術規則に関する既存の
  取り決めを付属書並びに実施協定に組み込むよう努める。



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環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)私訳 『第7章 衛生植物検疫措置』

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環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)『第7章 衛生植物検疫措置


■第1条 定義

1 この章において、
  「SPS協定」とは、WTO協定の一部である、「衛生植物検疫措置の適用に関する協定」を意味する。

2 SPS協定の付属書Aにおける定義は、必要な変更を加えて、この章に組み込まれ、本章の一部を形成
  する。

3 国際組織「国際獣疫事務局(OIE)」・「国際植物防疫条約(IPPC)」・「コーデックス委員会」が策定する
  関連定義は本章の履行において適用する。



■第2条 目的

 この章の目的は、

 (a) SPS協定及び、関係国際組織(OIE、IPPC及びコーデックス委員会)が策定する適用国際基準、
    指針及び提言の履行を強化・支持すること。

 (b) 加盟国の領域の人間、動物又は植物の生命もしくは健康を守る一方で、貿易参入問題の解決への
    努力を通じた加盟国間の貿易の円滑化を通して貿易の機会を拡げること。

 (c) 衛生植物検疫問題の意思疎通、協力及び解決を改善する手段を提供すること。

 (d) 人類、動物及び植物の生命又は健康の保護と合致した加盟国が維持する衛生植物検疫措置及び
    地域分離行為を承認するための仕組みを作り上げること。



■第3条 範囲

1 この章は、間接的もしくは直接的に加盟国間の貿易に影響を及ぼせる、加盟国の全ての衛生植物検疫
  措置に適用する。

2 本章もしくは実施協定の如何なる規定も、SPS協定に準拠した加盟国の権利又は義務を制限しない。



■第4条 衛生植物検疫問題に関する小委員会

1 加盟国団はここに、加盟国団の所轄官庁を含む衛生植物検疫問題に関する小委員会(小委員会)を
  設置する。

2 本協定の効力発生から一年以内に集まり、それから後は最低でも年一回又は加盟国団が相互に決定
  する通りに集まる。小委員会は初会合での手続規則を設ける。会合は、加盟国団が相互に決定する
  とおりに、直接、電話会談、テレビ会議、又はその他の方法を通して行う。小委員会はまた、通信を通じ
  て問題に取り組むこともできる。

3 小委員会は、本章より起こる技術的・科学的問題を明らかにし取り組む、加盟国の専門家レベルの
  代表者達で構成する技術作業部会を設置することに合意する。さらに専門家が必要な場合、当該
  部会の構成員資格を加盟国の代表に限る必要はない。

4 小委員会は、以下の事項を含む本章の履行に関する問題について検討する。

 (a) 事業計画の確立、監視及び審査。そして、

 (b) 加盟国間の貿易を円滑化するために本章の規定を更に詳しく説明する技術的事項に関する実施
    協定の開始、策定、採択、審査及び改訂。

5 4(b)で言及する実施協定は以下の事項を含む。

 (a) 競争当局及び連絡窓口(実施協定1)

 (b) そのために地域分離決定を取ることができる疾病及び疫病(実施協定2)

 (c) 地域分離決定の基準(実施協定3)

 (d) 措置の承認(実施協定4)

 (e) 監査実施の指針(実施協定5)

 (f) 証明(実施協定6)

 (g) 輸入検査(実施協定7)

 (h) 同等性:決定の手続(実施協定8)

6 実施協定の履行に対して責任のある各加盟国は、関係加盟国が別に合意しない限り、採択後三ヶ月以
  内に当該協定の履行に必要な全ての処置を取る。

7 小委員会は、本章の履行について委員会に報告する。



■第5条 所轄官庁及び連絡窓口

1 本章で述べる措置の実行に責任を持つ所轄官庁は、実施協定1に列挙される。通知に関して責任を
  持つ連絡窓口もまた、実施協定1で示される。

2 加盟国団は、自国の所轄官庁又は連絡窓口の能力に関する構造、組織及び区分における重大な変化
  について互いに通知する。



■第6条 地域条件への適応

1 加盟国の領域に疾病や疫病が存在しない地域又は区域がある場合、加盟国団は、疾病や疫病のない
  状態が侵入の場合にも維持されるようにするために、実施協定2の所定の位置にこの状態と措置を列
  挙することに、実施協定3に従って合意することができる

2 実施協定2に規定する疾病又は疫病が侵入した場合には、輸入国は、加盟国間の貿易を円滑化する
  ために実施協定2に規定する輸出国の措置を承認する。

3 加盟国団は、実施協定3に規定する基準に従い、実施協定2のリストに追加の疾病又は疫病を入れる
  ことに合意できる。

4 いずれかの加盟国が、自国が特定の疾病又は疫病に関する特殊な状態であると見なす場合、その
  加盟国はこの状態の承認を要求できる。当該加盟国はまた、合意された状態に対して適切な動物
  及び畜産物、植物及び植物性生産品、又はその他の関連産品の輸入に関する具体的な保証を要
  求することもできる。特定の疾病及び疫病のための保証は実施協定4に規定される。



■第7条 同等性

1 同等性は、実施協定4で規定されているような部門又は部門の一部に適用される措置とシステム、又は
  その一方の集合と個別の措置又はその一方に関係して加盟国が承認できる。実施協定4に記録する
  同等性の判定は、動物及び畜産物、植物及び植物性生産品における関係加盟国間の貿易、又は必要
  に応じて関連産品に適用される。

2 同等性の承認には、以下の事項の評価と受諾が必要である。

 (a) 管理を許可するため、そして国内及び輸入を行う国家の要件が満たされるようにするために機能
     している法律、基準及び手続、そしてプログラム。

 (b) 所轄官庁の文書化された構造、権限、指揮系統、“仕事の仕方”及び利用可能な資源。そして、

 (c) 管理・保証プログラムに関連する所轄官庁の能力。

  この評価において、加盟国団は既に得た経験を考慮に入れる。

3 もしも輸出国が、自国の措置が輸入国の適切な保護の水準を達成することを客観的に証明するなら、
  輸入国は、輸出国の衛生植物検疫措置を同等のものとして受け入れる。輸出国が適用する衛生植
  物検疫措置が輸入国の適切な保護の水準を達成しているかどうかの判定に及び際には、それらの
  加盟国は、実施協定8に規定する処理に従う。同等性判定の処理に関する加盟国の経験が増す中
  で、加盟国団は将来、処理の手順を加える又は改訂することができる。

4 同等性が承認されていない、もしくは適用が未決定のままである場合、貿易は、適切な保護の水準
  を満たすために輸入国が求める条件に基づいて行われる。これらの条件は、当該条件が合意され
  ている実施協定4に示すとおりである。もし条件が実施協定4において合意されず組み込まれてい
  なければ、輸出国が満たすべき条件は輸入国が規定する条件である。輸出国は、実施協定8に示
  す処理の結果に影響を与えることなく輸入国の条件を満たすことに同意できる。

5 実施協定4は以下の項目をリストにできる。

 (a) そのために各自の植物衛生検疫措置が貿易目的上同等のものとして承認される、部門又は
     部門の一部に適用される個別の措置と措置の集合とシステム、又はそのいずれか一方。

 (b) 同等性の評価が、実施協定8に示す処理に従い、実施協定4で指示する日までに(指示のない
    場合は輸入国が定める通りに)達成されることを可能にする処置。

 (c) 第7章第6条に規定する特殊な状態の承認に関係する特定の保証。

 (d) そのために加盟国団が異なる衛生植物検疫措置を適用し、3に規定する判定に結論を下して
     いない、部門又は部門の部分をリストにすることもできる。

6 関係加盟国の間に別段の合意がない限り、正式な衛生証明書又は植物検疫証明書は、輸入を意図し
  そのもののために同等性が承認されている動物及び畜産物、植物及び植物性生産品、又はその他
  の関連産品の各委託品のために要求されることとなる。当該証明書の手本となる証明書は、実施協
  定6に指示される。加盟国団は、共同して実施協定6に含まれる証明書の原則又は指針を決定でき
  る。



■第8条 確認

1 本章の規定の効果的な履行における信頼を維持するために、各加盟国は、所轄官庁の全面的管理
  プログラム(必要に応じて以下の事項を含む)の全て又は一部の評価を含められる、輸出国の手続の
  監査と確認を実行する権利を有する。

 (a) 点検・監査プログラムの審査

 (b) 現場検査

  これらの手続は実施協定5の規定に従い実行される。

2 各加盟国はまた、第7章第9条と合致する、輸入上の委託品に対する衛生植物検疫措置の実行を目的
  とした輸入検査(その結果が確認処理の一部を成す)を行う権利も有する

3 輸入国及び輸出国の同意を得て、加盟国は、

 (a) 監査・確認の手続及び検査の結果と結論を非加盟国と共有できる。又は、

 (b) 非加盟国の監査・確認の手続及び検査の結果と結論を利用できる。



■第9条 輸入検査

1 輸入される動物及び畜産物、植物及び植物性生産品、又はその他の関連産品に適用される輸入検査
  は、当該輸入品に付随する危険性を基にする。検査は不当な遅延なく加盟国間の貿易への影響を最
  小限にして実行する。

2 当該輸入品の輸入検査の頻度は、要請に応じて利用可能であり、実施協定7に示す場所はそれに応じ
  て適用される。加盟国団は、実施協定4に従った進展の結果として、又は本章に規定するその他の処
  置や協議の結果として、責任の範囲内で、必要に応じて、頻度を修正できる。

3 輸入検査が関連基準と要件、又はその一方の不適合を明らかにする場合には、輸入国が取る処置は
  関連する危険性の評価を基にする。可能な限り、輸入者又はその代表は、輸入国の最終決定を助け
  るために、委託品を利用する権利及び関連情報を提供する機会が与えられる。



■第10条 通知

1 加盟国団は、以下の事項について実施協定1に示す連絡窓口を通じて書面で互いに通知する。

 (a)  健康状態の重大な変化(実施協定2の疾病又は疫病の存在と進化を含む。)結果として起こり得る
     その他の加盟国のいずれかへの伝染についての危険性の管理に関した加盟国の能力の継続的
     信頼を保証するように時宜に適った適切な方法で通知すること。

 (b) 実施協定2にない疾病又は疫病あるいは新たな疾病又は疫病に関する重要な研究結果。遅滞なく
    通知すること。

 (c) 疾病や疫病の蔓延を防ぐ又は根絶するため、もしくは公衆の健康を守るために取られる各自の植物
    衛生権益措置の基本要件を越えた追加措置、並びに予防政策(予防接種政策を含む)の変更。

2 人間、動物又は植物の生命もしくは健康に関する深刻で差し迫った懸案事項がある場合には、即時の
  口頭の通知が連絡窓口に対して行われ、文書による確認が24時間以内に続く。

3 加盟国に人間、動物又は植物の生命もしくは健康に対する危険に関する深刻な懸案事項がある場合、
  その状況に関する協議を、要求に応じて、できる限り早く、加盟国団の間で別段の合意がない限りど
  んな場合でも13日以内に開催する。各加盟国は、このような状況において、貿易の混乱を回避する
  ため、そして互いに受け入れることのできる解決に達するために必要な全ての情報を提供するよう努
  力する。

4 衛生植物検疫措置を受ける産品については、関係する基準と要件、又はその一方との不適合がある
  場合、輸入国は、実施協定7に示すとおりに不適合についてできるだけ早く輸出国に通知する。



■第11条 暫定的措置

 第7章第10条、特に第7章第10条の3を侵害することなく、加盟国は、深刻な人間、動物又は植物の生命もしくは健康上の理由で、人間、動物又は植物の生命もしくは健康を守るために必要な暫定的措置を採択できる。当該措置は24時間以内にその他の加盟国の通知され、要請に応じて、事態に関する協議が13日以内(加盟国団の別段の合意がない限り)に開かれる。加盟国団は、当該協議を通じて提供される情報を十分に考慮する。



■第12条 情報交換

1 加盟国団は、実施協定1に示す連絡窓口を通して、確かさをもたらし、相互信頼を生み、管理された
  プログラムの有効性を証明するために、統一的且つ組織的に、本章の履行に関連する情報を交換
  する。

  必要に応じて、これらの目的の成果は職員の交換により高めることができる。

2 各自の衛生植物検疫措置の変更、そしてその他の関連情報に関する情報交換は、以下の事項を
  含む。

 (a) 本章に影響を与える可能性のある規制基準又は規制上の要件の変更の提案を(その確定に先立
    ち)検討する機会。

 (b) 貿易に影響を与える最近の動向に関する状況説明。そして、

 (c) 第7章第8条に規定する確認手続の結果に関する情報。

3 加盟国団は、衛生植物検疫措置及び関連事項についての関係科学討論会に対する学術論文または
  科学的データの共有を規定することができる。



■第13条 技術的協議

1 加盟国は、本章で取り扱う措置の適用又は本章の規定の解釈に関する問題の解決を目的として別の
  加盟国との協議を開始できる。

2 加盟国が協議を要請する場合、当該協議は出来る限り速やかに開催される。

3 もし加盟国が必要と見なすなら、小委員会に当該協議を円滑化するよう要請できる。小委員会は、更な
  る議論のために問題を特別作業部会に委託できる。特別作業部会は、問題の解決に関して小委員会
  に提言できる。小委員会は、不当に遅延することなく問題の解決を目的として提言について議論する。

4 当該協議は第15条(紛争解決)に基づく加盟国の権利と義務を侵害するものではない。



■第14条 協力

1 加盟国団は、本章の規定と一致する共通の利益となる衛生植物検疫問題に関して更なる協力と連携の
  機会を模索する。

2 加盟国団は、第一次産業問題に関係する第16章(戦略的連携)の規定及び付随する実施協定が、
  本章の履行に関連することを認める。

3 加盟国団は、本章の履行、そして特に本章の実施協定の策定を円滑にするために、互いに協力する
  ことに合意する。




posted by FumiHawk at 00:38| Comment(2) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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